次男は、父親がこわくて顔をゆがめて泣くのを我慢していた。
今回は全面的に次男が悪い。弁護の余地はない。怒りで攻撃的になって
いる夫が次男に近寄ろうとしていた。わたしは、体罰が待っているな、と
直感した。次男の立場で考えると、話しも十分にきかず、納得もしないうちに
ただ痛い目にあわされるだけでは、ただの暴力として記憶にやきつけられる
だけだろう。わたしが話すから むこうへ行っていて!と夫を居間のほうへ
軽く押したら、岩のように不動で立っていて、ここできいているから、話せ!
と偉そうに言い放った。夫に言葉に気をつけるように言ってから、次男と
静かに話すために居間に移動した。
テーブルについているときはみんなが気持ちよく食べられるように、いろいろ
したらあかんことがあるんやで。ママがあんたの前でヨーグルトを吹き出して
あんたにかかったら嫌やろ?次男は首で返事をするだけで閉じた貝のように
なかなか返事をしなかったが、そのうち小さい声で返事した。それに牛の
お母さんが自分のこどもを育てるための牛乳を人間がもらってるんやで。
そんなんしたら もったいないやろ?実験したかったら水で、やり。ぬれても
いい、おふろ場でやり。歯を磨くときのコップに水入れたら、できるやろ?でも
水もあんまり無駄使いするんとちがうよ。ほら、悪いことしてんからパパに
あやまっておいで。次男の謝罪をきいた夫は ヨーグルトの話は、どうして
そういうことをしたらいけないかわからなかったら叱らずに教えてあげる。でも
パパが怒っているのは注意されたときのお前の態度だ。ふてくされるのを
やめなさい。わたしがあとを続けた。今回はパパの言っていることが正しい。
そんなときは、叱られたからって腹立てるのやめ。パパの言ってることが
おかしいと思ったらママに言いにおいで。ママからパパに話すから。
夫が、台所で後片付けをしているわたしのそばに来た。わたしは、きょうは
あんたのしたことよかったよ、と声をかけた。今度から次男がふてくされない
ようになってほしいと夫が言うので、千回ぐらいいわなあかんよ、と
わたしは答えた。