

羞恥心っていうのに意識的に蓋ができる僕(そうじゃなきゃ、憧れのミュージシャンとかに仕事でインタビュー取材とかできないよ)。当然告白とかがんがんできる人間なんで、電話とかメールなんてまどろっこしいことしないでそりゃ直接言えますよ。が、が、が、実際は特に告白とかそういうのはなしに、何となくそういう関係になってしまうのが僕の場合は多いんです。それはそれで浪漫がないですね。駄目男ですね。僕とつきあうひとは本当にたまったもんじゃないですね。「一度は恋愛に狂ってみなさいよ!」とか言われますが、まったく持って僕には向いていないんだと思います。だから風味堂の「愛してる」みたいなシチュエーションは僕にはありえない。“初めて君からその身を寄せてきたんだ”の瞬間にこっちの手が出てしまいそうです。でもそれでは浪漫がないですね。
風味堂「愛してる 」 作詩・ 作曲:渡 和久
恋の終わりはいつも人を優しくする/悲しいけれどホントなんだ/君がサヨナラ言った二人最後の夜/初めて君からその身を寄せてきたんだ/恋の終わりはいつも人を素直にする/悔しいけれどホントなんだ/朝がせまってきてる二人最後の夜/声にならない気持ちがふと手を伸ばす/あと少しだけ あと少しだけ/君を抱きしめさせてくれないか/夜が明けるまで君のぬくもりを/ウソでいいから僕にくれないか/愛してる 愛してる/もう 言えなくて/Ha- ずっと愛してる/恋の終わりは君をもっと綺麗にする/今よりもっと綺麗な思い出になる/めぐる季節に消える二人最後の夜/そんな思い出なんかに/変わってしまう前に/あと少しだけ あと少しだけ/君を抱きしめさせてくれないか/夜が明けるまで君のぬくもりを/ウソでいいから僕にくれないか/愛してる 愛してる/もう 言えなくて/Ha- ずっと愛してる/いつか消えてしまう恋の中で/ひとつだけ残るものがあるなら/夜が明けるまで君のぬくもりを/ウソでいいから僕にくれないか/…くれないか/愛してる 愛してる/もう 言えなくて/Ha- ずっと愛してる
最近はご無沙汰ですけれど、風味堂には二度ほどインタビューしたことがあります。もともと「楽園をめざして」で虜になった僕、渡さんの超絶ピアノ・プレイに憧れています。亡くなったお母さんがピアノの先生をされていたということで、てっきり幼少からピアノ漬けで育ってきたひとなのかと思っていたんですが、本人に聞いたら「いや、大学時代にコピー・バンドとかやり始めてからですよ」と。…本当かね? たかだか7、8年でここまで弾けるようになるものかな? と、そこは僕はどうにも懐疑的になってしまうほどピアノ・プレイが凄い! 3人とも素晴らしい演奏技術を備えたミュージシャンではありますが、本当にいろんな音楽性やリズムのにトライしていて、そもそもその柔軟性が凄いなって思います。
「愛してる」はドラマの主題歌になったこともあり大ヒットしたわけですが、すぐ手が届く距離に君がいるというのに、しかもどういうシチュエーションかは説明されていないけれどこれで会えなくなってしまうという夜なのに、「愛してる」という一言を言えないという優柔不断さ…たいていのひとの心には響くだろうね。僕みたいに「さっさと言えよ、そんなもん」なんていうのでは浪漫がないですね。わかっています。言えないからこそ、こういうドラマが生まれる。しかもサビでがんがんエモーショナルに「愛してる」って何度も歌っておきながら、“もう 言えなくて”で締めるというこのせつなさ! さすがだなぁ。シチュエーションが説明されていないゆえにいろんな受け取り方ができるわけで(プラトニックなのか、ある程度つきあった仲なのか、恋人同士だったのか…とかね)、“もう 言えなくて”の意味合いもそれによって180度変わるんです。これが凄い! 本当、考えられているなぁって思います。渡さんって言葉遊びっぽいこともするひとですけれど、凄い物語性を樹脂してソングライティングするひとですので、「愛してる」は完全に練りに練って作り上げたゆえの境地とさえ言えます。“恋の終わりはいつも人を優しくする”→“恋の終わりはいつも人を素直にする”と来て、“恋の終わりは君をもっと綺麗にする”と来るところとかね、いやはやさすがだなぁ!
そしてこんなせつな~いラヴソングを書き続けている渡さんも先日遂に結婚されましたよね。ちゃんと「愛してる」は言えたのかな?