ブログネタ:最近どんな本読んだ? 参加中

楽器や音楽にのめりこんだひとであれば、一度はほんのりでもプロ・ミュージシャンっていうのは夢みるんだと思います。そしてそれなりに努力してぶつかるのがプロとアマの壁。でもいったいプロ・ミュージシャンって何が基準なんだろうね? ギャラがもらえたら? レーベルと契約できたら? 生計を立てられなくても人前で演奏していたらプロなのかな? いろいろ考えだすときりがないくらい深い問題です。でもそもそも夢みるときっていうのは、輝かしいオンステージなり豪華なレコーディング・スタジオなりを思い浮かべているのではないですか? 少なくても街の小さなレコード店へのキャンペーンって図ではないですよね? でもなかなか現実は厳しいんです。今はインディというか、セルフ・プロモーションでもある程度のことができるようにはなりました。が、それでも生計を立てるまでに育むっていうのはやっぱり大変です。鶴の機織りではないですけれど、意外とみなさんが知っているネーム・ヴァリューのミュージシャンでもウイークデイは働いていたりとか、そんなのは普通にあることなんですよ。

ところで、プロ・ミュージシャンの中でもミュージシャンズ・ミュージシャンと呼ばれるひとがいます。そういうひとはリーダー・アルバムだったりソロ・アルバムだったり、もちろん自身の活動も精力的に行なっています。が、あえてこういう書き方をしますけれど、メインの収入源っていうのはいわゆるスタジオ・ミュージシャンなり、バッキング・ミュージシャンの仕事っていうことも多い。プロデューサーやディレクター業を兼任されていたり、エンジニア系のことも手がけるひともいらっしゃいます。あとは楽器メーカーの楽器開発に携わったり、デモンストレーターを努めたり、音楽教室などを開校されているかた、それこそいろんなことをされていたりするんですよね。

言わばミュージシャンとしての表の顔と同時に、裏方の仕事でも超一流というミュージシャンとなると一握りになってしまいますが、そのうちのひとりとして言えるのがDr.Kこと徳武弘文さんです。
http://rocosmusic.com/drk/
日本を代表するギタリストなので名前をご存知のかたも多いでしょう。とりわけカントリー・ミュージックにおける様々なテクニック、造詣に関しては間違いなく第一人者。僕のレコード棚をひっくりかえして、このひとが参加しているレコードを選び出そうとしたら大変な数だろうなぁ。国内のロック史を振り返るたびに、このひとのギター・プレイがどれだけ多くの名盤を産み出してきたかってことは何度となく思い知らされてきています。そしてみなさんも彼の名前を認知する、しないは別として、絶対に何かしらのかたちで彼のギター・プレイはいつのまにか聴いているはず。

そんな徳武弘文さんが書き下ろした、なんと意外にも初となるエッセイ集が「ぼくらは今もエレキにしびれている」(かんき出版)。
http://www.kankidirect.com/
去年出版された書籍なんですけれど、非常に面白い内容で一気に読めちゃいます。徳武さんのことをまったく知らないひとが読んでも相当興味深いはずです。彼がギターを弾き始めたきっかけなり、これまでの歩みっていうのが書かれているのは当然のことなんですけれど、とりわけ面白いのは現在の音楽シーンの問題点もストレートに描いている。中でも面白いのは、80年代に打ち込みの音楽が主流になっていった際、ミュージシャンとしての仕事のやり方が変わってしまったスタジオ・ミュージシャンとしての苦悩だろうね。実際、そこでドロップアウトしてしまったミュージシャンも多いんです。徳武さんの場合はテクノロジーとの落ち着きどころを見つけて、自身でも打ち込みトラックを導入したソロ・アルバムなども制作したりとサヴァイヴァルしたひとり。その張本人がそういった経緯を自身の言葉で語っているというのは資料的価値も高いです。いわば理想と現実のギャップが描かれているわけですが、サヴァイヴァルしているひとの書く言葉だから、そこには可能性もちゃんと書かれている。そこが素晴らしい。

さらに目玉になっているのは、彼の盟友ともいうべき、細野晴臣さん、山本コウタローさんとの対談でしょうか。特に細野晴臣&東京シャイネス/ワールド・シャイネスでは、細野さんって基本的にインタビューを受けていないはず(僕も申し込んだけれど実現しなかった)。徳武さんと細野さんによる対談でシャイネスのことが語られているっていうのも非常に貴重なわけですよ。と、同時に思い出話だけで終わるのではなくて、これからの音楽人生についても語っている辺りも実に良い。だからこそいろいろと考えさせられる部分があるんだよね。

そうそう、さっき「徳武さんのことをまったく知らないひとが読んでも相当興味深いはず」って書いたけれど、実は未発表ライヴ音源が収録されたCDシングルも付属しているんですよ。彼の華麗なるチキン・ピッキングによるギター・プレイを聴きながら読書にひたってみるのはいかが?