ブログネタ:あなたの「座右の銘」教えて 参加中
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これは「まずは疑うところから入れ」って感じかな。

FMエアチェック世代、アナログ世代の僕らには少しでもクリアな音質で音楽を聴きたいという貪欲な欲求があります。その軋轢は常にいろんなタイミングであるわけですが、20代ぐらいの子たちとはそこにある種の断絶を感じます。特に配信で楽曲単位で購入するのが主となっているひとたちには、そもそもコンセプト・アルバムという考え方は通じないわけだし、そこにはそういった長時間のリスニングや理解力を要する音楽文化が入っていきづらいんじゃないのか?という危惧感もあるわけです。ただいちばん思うのはmp3レベルの音質で満足してしまうことで、いわゆる「良い音」のレベルが下がらないかってこと。「良い音」なんて個人趣向もあるし一概に言えるものではないけれど、なんか最近浅い音楽ソフトが多すぎないかっていう疑心が、余計にそういう想いが強まる結果になっています。

管楽器メンバーのいるホーンズ・バンドというのは僕らにとっては憧れなんですが、シカゴだったりブラッド、スウェット&ティアーズ、チェイス、アース、ウインド&ファイアーetc...いろいろ愛聴してきましたね。アルバムを買い漁るようになったのは高校時代以後なんですが、中古屋とかレンタルレコード屋とか行きまくって聴き狂いました。上に挙げたうち、シカゴとアース、ウインド&ファイアーっていうのは現役のバンドとして存在していたんですよね。アースは近作に関してはすっかり微妙で期待できないんだけれど、シカゴには現役感があります。またあのロゴが毎回ジャケットの何処かにあるっていうお約束も好きでした。長いキャリアがあるバンドゆえ、音楽性は様々ではありますが、歌ものとインスト的展開とがうまくブレンドされているのが聴きどころです。A.O.R.バンドみたいに認識されていることのほうが多いのかな?

先日の来日公演には行っていないんですけれど、それもあってレコード屋を回って気づいて驚いたこと。名盤と名高い『シカゴと23の誓い』ですが、なかなか在庫がなかったんです。おいおい、このアルバムを置いていなくてどうする。たまたま僕が行ったタイミングが悪かったのか、来日公演タイミングでみんな買ってしまったからなのか? よくわからないんですが最近売っていないんです。ま、僕の場合はソニーのナイス・プライス・シリーズが出たときに購入したやつがあるんでいいんですけれど、売っていないということに驚きました。だって「長い夜」が入っているアルバムだよ?

さらに驚いたのがもうひとつ。近年出たらしい最新デジタル・リマスター盤(輸入盤)なんですが、明らかに過剰に音圧を上げ過ぎていて割れている! 割れているがゆえのヒスノイズも入っている! 遥かにソニーのナイス・プライス・シリーズ盤の音の方が良いのです。これって意味ないじゃん。すっかり「最新デジタル・リマスタリング」云々っていう名目に弱くなっている自分だったんですが、案外そういうのってあてにならないんだなぁっていうのを今回痛感しました。やりすぎはよくないよね。まぁ、失敗は仕方ないにしろ、それで流通してしまっているということに愛のなさを感じるわけです。メンバーもOKしないでしょうに、あんなもん。※今度ワーナーから出るベスト盤は聴いていないので、あくまで僕がやり玉にしているのは輸入盤ね。

で、話に戻るわけだけれど、こういうリイシュー盤っていうのは当然そのときそのときの新しいリスナーが聴く機会にもなるわけです。以前聴いたことがある人間ならば「これはおかしい」とかって発見があるわけですが、知らないとそれがそういうもんだと思ってしまう。例であげればビートルズ。近年はリマスター盤がちょこちょこ出ては来ましたが、CD以後のビートルズを聴いたことないひとはいちばん劣悪な音質のビートルズしか聴いたことがないんだよね。アナログの音の良さははっきりいってCDでは勝負にならない。なんであんないい加減なんだろう、と憤りをおぼえるほど。そしてそういうのも若い子達にはわからないわけだ。さらにはmp3で慣れた耳には不思議にすら思わない。これは怖いよ、音楽文化の衰退だよ。本当に僕は恐怖に感じるんです。これは根源的な問題であると思う。

それでいてやれCDが売れない、CD市場のターゲットはエルダー・マーケットだ言っているわけでしょう?
そうじゃないよ。根本的に良質で高音質の音楽をアピールしようっていう努力が企業努力として足りないんだよ。努力しているとしたら成功していないんだよ、ってことが言いたい。そんな中途半端なものを売るなと。

アナログ盤やらCDっていうのはカセットに落として聴いた世代なんです、僕ら。そうなると1曲ごとに、またカセットの特性ごとに録音レベルやら何やらを気にして処理する必要があった。面倒くさいけれどその工夫も面白さだったんだよね。実はそういう経験って無駄じゃなくてさ。今はエディター・ソフトで大まかな出力レベルを合わせてくれたりいろいろあるんだろうけれど、与えられたものだけで満足するんじゃなくてさ、自分好みのものに求めているって努力をすることで学ぶべきことってあるんですよね。そして喜びもまたひとしお。それが味わえないっていうのがつまらないし、問題点だとも思うわけ。

やっぱり疑うところからかかるっていうのが必要なことがあると思うなぁ。音楽だけに限らないけれど、既成概念って意外とあてにならない。僕ぐらいの年齢になってもこういうことがあるわけだから、世の中、おかしなことばかりなんだよね。