先日めでたく4thアルバム『Adze of penguin』をリリースしたthe band apart。
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僕が聴きはじめたのはかなり遅くて『quake and brook』から。おそらくNACK5で流れたのを聴いて「なんだ、このバンドは!!」っていうのがきっかけ。翌日、職場に行って「いやぁ、バンドアパートって凄いバンドがいるんだよ」みたいな話をしたら、「今頃そんなこと言っているの!?」と馬鹿にされた記憶がある。当時の僕はいわゆる一線の音楽に嫌気をさして、完全に旧譜リイシューと自分の周りの音楽にしか心を開いていなかったから、国内のインディ・ロック・シーンの攻勢にはまったくもって乗り遅れたのです。エルレガーデンでもモンゴル800でも完全に後聴き。ただバンアパはそうした自分の姿勢に猛省する契機を与えてくれました。

90年代以後の国内のロックって遅れて来たオルタナみたいなバンドが多くて、みんな同じ感じだし、わけわからん英語の歌詞でカッコつけているし、だいたいギター・ソロも弾けないような下手くそばっかりで完全に興味を失っていました。そんな中、聴いたのがthe band apartでした。いやぁ、驚きでした。まず演奏がめちゃくちゃ上手い。テクニカルなだけじゃなくて凄くメロディがしっかりしていて、骨組みはハードロック/ヘヴィメタルに通じるところがあるんだけれど、ギター・ポップ的にも聴けるポピュラリティがある。そして歪んだギター・サウンドなのに透明感がある。当時はデータも乏しくて本当に謎のバンドでした。だいたい顔写真が出てこない(^^;)。その後ライヴに行って、こういうルックスなのかぁと知ったくらいでした。

ちょっとした記事を書くことになって初めてライヴを観たのは『DANIELS E.P.』制作に着手しはじめたという頃具合の渋谷AX公演。『quake and brook』なんてこんなもん再現できるのか?と思っていたら、ほとんどまんま再現しているのを観て「僕が愚かでした」とただただ平謝り状態に。以後、追いかけるようになりましたね。『alfred and cavity』では荒井さん、木暮さん、今回は原さんにお逢いすることができた。川崎さんにだけは逢ったことがない。両国国技館公演も観てライヴ評書いたし、取材するのが本当に楽しみなバンドのひとつです。

驚くのはその幅広い音楽性なんですが…多分年齢近いんじゃないかな? 僕はメタル系の音楽は聴いてこなかったけれどそれでも流行のものはなんとなく耳にしてきているし、そのほかのテイストもやたらとピーンと来るものが多い。いちばん大きいのはクロスオーヴァーやプログレのエッセンス。クロスオーヴァーも国内で言えばフュージョン系と呼ばれるものの流れすら感じる。乱暴にいえば、学生時代に吹奏楽やっていた子がカシオペアなんかを聴くようになって、18ビートの高速ユニゾンや激しいキメに狂喜している感覚が持ち込まれている。そういうのって90年代当初はいちばんカッコ悪いとされていた手法で、実際カシオペアのセールスも落ちて行ったし、そういうバンドをやろうとすると「キメが多くてカッコ悪い」とか言われてさ。すっかり意気消沈した時代。しかしそうした可能性を現在型ならではのスタンスですっかり甦らせたのがthe band apartだったのです。そこに一番僕はシンパシーを抱いて凄くリスペクトを感じていました。今回の取材で原さんにお逢いできて、その辺の想いを伝えることができたのは嬉しかったなぁ。

『alfred and cavity』以後、ますますクリーン・トーンの比重が大きくなって、バンド・アンサンブル的にも隙間が大きくなった。埋めるのではなくて空ける。これは演奏テクニックとセンスがないとできない。『alfred and cavity』が出たときは最高傑作だと思ったしいまだに愛聴盤です。そしてそれをさらに進化させたのが『Adze of penguin』。『alfred and cavity』で獲たスタイルを根底にして、各種エフェクターやパーカッション、アコギなどを導入するなど色彩感が増しています。唯一無比の存在。荒井さんの歌もよりソフトな魅力がくっきりと出て来て色気があっていいんだ。いっそこのまま日本語詩曲もありだと思うなぁ。絶対カッコ悪くなんかならないよ。

16日(金)の後楽園JCBホールは『Adze of penguin』ツアー初日ということで多少固かったけれど、アルバムの感じはほぼまんま再現されていましたね。凄かった。でもツアーで揉まれているうちにもっと良くなるはずだし、ツアー・ファイナルの幕張メッセ公演なんて相当化けているだろうなぁ。レコードとして聴いているとクリアなサウンドが印象的だけれど、ライヴだと一挙一動の激しさも目の当たりにできることもあって凄いアグレッシヴな印象を持ちます。その辺も面白い。荒井さん、原さんのMCとかね。喋りがまた面白いんですよ。笑いをとろうとはしてないのに「間」で笑わせるというか。この辺、トクマルシューゴさんと似ている。

ネタバレになるから内容は書かないけれど、アルバム中心でありながらも「おぉっ!」っていう曲も聴けたりします。ま、セットリストは変わるんだろうから結局はそのときそのときのドキュメントにはなるんだろうけれど。若い子に今更バンアパを勧めても「何今頃言ってんの?」で終わってしまうでしょうけれど、僕としては同世代以上、それこそ80年代のフュージョン…カシオペア、スクェア、ナニワエクスプレス、パラシュート、高中正義 etc...などに心を躍らせていた輩にthe band apartをチェックしてほしいのです。「こういうやり方があったのか!」っていう発想の部分での革新性、そして演奏技術の高度さに感動するはず。中でもやっぱりアルファ時代のカシオペアだろうなぁ。『Adze of penguin』、今ならば紙ジャケットの限定盤も間に合いますよ。彼らの限定盤はどれもプレミアム・アイテムになってしまうので、出たときに買うのがベター。ということで最近の北村いちおしの1枚です。次号のPlayerでは僕が手がけた原さんへのインタビューも掲載されますのでそちらもお楽しみに。