それまで全く疑うことを知らなかった僕は

しばらくの間途方に暮れてしまった。

友達はたくさんいるけどなかなかこの話題には

触れられなかった。


きっと外から見たら仲の良い円満夫婦。

そう見えていたに違いないし、自分でもそう思って

料理以外の家事は僕がやっていた。

気持ちがしっかりしていた頃は・・・・。


K子は料理以外の洗濯、掃除

マンションの理事会の仕事など

一切を放棄して僕に押し付けていた。


疑念がわき始めたある日

ちょっとそのことにも触れてみた。


僕:「掃除やっておいたよ。それから洗濯も。

本当は洗濯物は外に掛けたいんだけどね。

天気も良くないし、乾燥機もかけといたよ。」


K子:「そんなに押し付けがましく言わなくたっていいじゃない。

掃除も洗濯も家政婦雇えばやってくれるし、

洗濯を外に干したら乾きが固くなってイヤなのよね。」


僕:「ちょっとくらい感謝の気持ちないのかな?」


K子:「金で解決できることは金が働いてくれるから

そうしようよ。」


僕:「・・・・・(唖然)」


K子:「そんなこと言われるからあなたとは

一緒に居たくないって思ってくるんじゃないのかな?

あなたは薄給だけど、私は高額所得者なんだから、

一緒じゃなくてもいくらでも好きな暮らしができるんだから。」


僕:「あのね!僕が薄給だとか言うなら世の中の人はその発言に怒るよ!」


K子:「悔しかったら金稼いで来い!私はもうあなたとは一緒に居れないし、

別れたいと言おうと思ってた。」


いよいよ問いただす時が来た。

K子は毎年1度か2度は手術をしなければいけない状態だった。

大小の差はある程度あれど、フォローアップが大事なので

体に負担はあったが、自分では納得して治療を受けているようだった。


夏の旅行から1ヶ月くらい経って、

またまた入院が必要なタイミングになってきていた。

術後の切除部位なども見せられたこともある僕は

今回は軽い検査入院に近いものだと聞いて安心していた。


毎日のお見舞いの中で、当然K子の両親とも話す機会がある。



K子母:「この間親戚が亡くなってね。K子の夏休みなのに駆けつけてくれて。

 体調も良くないのに本当に優しい子だわ。」


僕:「ええ、聞きました。旅行から帰ってすぐだったんで僕も心配してたんですよ。」


K子母:「でもね、まあ朝早くだったから、夜の運転だったら余計に心配だったけど。」


僕:「??。 ああ、そうですよね。朝ならそうですよね・・・・・・・。」



記憶の悪い僕が朝と夜を間違って覚えてたかな?

いやいや、あれは確かに夜に車で出て行ったよな。

おかしい、誰かが嘘をついている。

母?K子? 母は僕に嘘をつくか??

K子は僕に嘘をつくか?

心臓が早くなって、針に刺されたような気分に襲われてきた。

やっぱりおかしい、絶対に夜に出て行った。

ってことはどこか別のところに泊まったのか・・・。


疑いたくはないが、疑わざるをえない事態の発覚

その年僕は仕事が忙しく夏休みを取れなかった。

「私は年に3回は海外旅行できるくらい稼ぎがあるんだ」と

豪語していたK子は、その年の夏は女性の同僚たちと

ヨーロッパへ行くことにしたらしい。


何も疑うことのなかった僕は、

順調にはかどっていた仕事に夢中になっていた。

ほんとに何の疑いもなかった。


K子は旅行から帰ると、写真や土産などを楽しそうに見せてくれた。

確かに女性だけの旅行のように見えた。

まったく疑いはなかった。




K子:「親戚がなくなったの。朝に出ればいいかもしれないけど

 早めに行きたいから、今から出て明日の夜に帰る。」


僕:「それは大変だね。疲れてると思うから気をつけて

 運転して行って。ここから200キロくらいはあるだろうからさ。」


K子:「時差ぼけで疲れてるけど、帰りの飛行機はずっと寝てたし大丈夫。」


僕:「そっか、じゃあ気をつけて。ご両親にもよろしく。」



そんな会話があって、夜7時くらいには出て行った。

まさか、その夜にあんなことがあったなんて。