私が通った幼稚園はカトリック系だった。



仏教系新興宗教にドップリ浸かった家だったが、そこがほぼ家の目の前と言える場所にあったので、送迎の楽さから通わせたのだと思う。



今でも覚えているのは、園の門の所にあった綺麗な聖母マリア像のこと。

素材は何かわからないけれど、バブル期に庭先などでよく見かけたような白っぽい優雅な細身の像であった。



私はその像を毎日見ていたので、そのうちに一見綺麗なマリア様だけれど、実は表面が小さなヒビだらけということに気付いてしまった。



そして、その様子が表面上は上手く取り繕っているけれど、実はボロボロ(両親は当時既に毎晩のように喧嘩していた)な我が家によく似ていると思っていた。



だからこそ、余計にこの像に妙に惹きつけられてしまっていたのかもしれない。



ある日、うっとり眺めている時に、像の前でうっかりそのことを母に口走ってしまった。



外であったにも関わらず、大声で激怒された。

家ではいつも不機嫌でよく怒鳴られていたが、そこまで怒らなくても?というぐらいに喚かれたので、何と言っていたかはよく覚えていない。



それ以降、口に出す言葉がより慎重になったし、萎縮するようになったのは言うまでもないが、その後も地雷は度々踏むことになったし、なぜ怒られているのかよくわからないということもあったように思う。



大人になった今自分が思うのは、子どもがもしそういう言動をしたとしたら激怒するのではなく、まず自分達の日頃の言動を振り返るだろうなということである。



そして、自分の家はその十数年後にやはりヒビが崩壊に到達し、散り散りになったが、あの時のマリア様は今どうしているだろう?やはりヒビ割れが進んで壊れてしまったかなと、ふと思い出すことがある。