病室での対決

 

入院することになった三島。病院を訪れた元気に看護師がこう言いました。

 

看護師『あの人良くなろうって気ないのかしらね!これ以上酒を続けていたら、助かりませんよ!』

 

元気『・・・・・!』

 

 

急いで三島の部屋に入ると、三島はウイスキーを飲んでいました。

 

 

ったく、これだからアル中は・・・。

 

 

元気『三島さんを殴り倒してでも酒を取り上げます』

 

三島『お前の腕で俺にパンチを入れれるとでも思っているのか!?』

 

元気『三島さんから酒を取り上げるためなら、やってみせます!』

 

三島『おもしろいな、やってみろ!』

 

 

そして元気と三島の対決が病室の中で急に始まりました。病院でボクシング対決する2人組がいたら、ヤベェよ?

 

 

勝負は三島の勝利かと思いましたが、元気が三島のパンチをよけ、パンチが顔に思いっきり入り、三島が倒れます。

 

 

元気『ごめんなさい!だいじょうぶですか!?』

 

三島『堀口・・・強くなったなぁ・・・』

 

元気『三島さんが勝手に弱くなったんじゃないか!酒、やめてくれますね!?治療に専念してくれますね!?』

 

三島『つよくなった』

 

三島『うん・・・よかった・・・ふっふっふっふ・・・はっはっはっは!』

 

 

三島は嬉しかったんでしょうね、元気が自分を打ち負かすほど強くなって。なにかを成し遂げた気持ちがあったのかもしれません。

 

 

 

最後のスパーリング

 

元気が見舞いのために三島の病室を訪れると、三島の姿はありませんでした。

 

 

医師に話を聞くと、退院したばかりだと言いました。何も知らない元気は心の底から喜びます。

 

元気『治ったんですね!先生!ありがとうございます!』

 

医師『・・・・・・・』

 

 

三島はジムに向かったと聞くと、元気もジムに駆けつけます。ジムに着いた元気は、三島と会いました。

 

 

元気『三島さんお帰り!よかったね三島さん!ほんとうに!』

 

三島『おまえを待ってたんだ!退院祝いにスパーリングでもやらんか!?』

 

元気『だって、退院そうそうそんな・・・』

 

三島『長い間休んだから、腕がウズウズしている!さぁ、したくしろ!』

 

 

そういうわけで、スパーリングをすることになった元気と三島。

 

 

スパーリングの準備のときの三島の表情は、見ててつらいものがあります。三島は何を思って、スパーリングに向かったか・・・。嬉しかったのか、悲しかったのか。見てるこっちも苦しくなります。

 

 

そして始まったスパーリング。殺気すら感じられる三島のパンチに元気は圧倒されます。

 

元気(すごい・・・やっぱり三島さんはすごい!)

 

 

はじめは三島のパンチに圧倒されましたが、元気のパンチが入るようになります。

 

ジムの人間『おぉー!すごいぞ!元気ちゃん!』

 

三島にパンチが入り、元気は喜びます。

 

 

しかし、三島が急に息をきらして、その場に倒れてしまいます。

 

 

元気『ど、どうしたの!?三島さん・・・』

 

 

三島は起き上がり、元気にパンチするもそのパンチは弱々しいものでした。三島はパンチしていた腕を下げ、横に大きく広げます。

 

 

その顔は涙であふれていました。

 

 

三島は両手で元気を強く抱きました。

 

三島『強くなったぞ堀口・・・こ、これで・・・サヨナラだ・・・・・』

 

 

元気を抱いたまま崩れるように倒れていく三島。このとき、もう三島にはスパーリングをするだけの体力もなかったのです。それでも三島は、最後に元気とグローブを交えたい・・・最後まで元気に情熱を捧げたい・・・その気持ちが三島の精神を支えていたのです。元気の成長が三島にとって、すべてでした。もう泣くしかないよなぁ。

 

 

 

三島の最期

 

すぐさま病院に運ばれた三島でしたが、すべてが手遅れでした。元気は魂が抜けてしまった様子。

 

 

三島に意識はなく、肉体だけが死と闘っている状態です。断末魔の叫びだけが病室に響きます。

 

 

元気『死んじゃうんですね・・・?前からわかってたんですね・・・どうして教えてくれなかったんですか・・・!?』
 

元気『おれ、なーんにも知らなかったから・・・もう治っちゃったと思ってさ・・・力いっぱい殴っちゃったよ・・・いちばん大切な人を・・・おれがこの手で・・・』

 

医師『違う!彼がそれを望んだんだ!』

 

医師『きみもボクサーなら・・・いや、男なら・・・死に場所と死に際を選んだ彼の気持ちがわかるだろう!』

 

 

元気はもう三島が助からないことを悟り、三島のもとに近寄ります。

 

 

そして元気は、声を大にして、三島から教わったことを自分のパンチを交えて、叫びます。

 

元気『左ストレート!右足をのばし、かかとをあげ、体重を前方の左足に移しながら、左拳を構えの位置からそのまま目標まで一直線にのばす!』

 

元気『右ストレート!右足をのばしながら・・・・・』

 

 

元気がそうしているうちに、三島の断末魔が収まり、やがて表情が穏やかになっていきます・・・。

 

 

ジムの会長『聞こえているんだ!元気ちゃんの声が・・・!だから喜んで・・・安心して・・・元気ちゃんさえ立ち直って、まっすぐボクシングの道を進んでくれれば・・・もう栄ちゃんは何も思い残すことは・・・』

 

 

元気『ボクシングは自分との孤独な戦い!いかな苦境にも・・・けっして目をそらさない!目をつぶらない!』

 

 

意識のない三島でしたが、元気の声を聞いて、心が安らいだのでしょう。元気なら立派にやっていける・・・!もう心残りはない!と意識のどこかで思ったのでしょうね。その場所は心だったのかもしれません。

 

 

そして、別れのときが来ました・・・。

 

 

医師『ご臨終です・・・安らかな死に顔です・・・』

 

 

三島は息を引き取りました。これが三島の最期でした。くそっ、この師弟関係は最後の最後まで泣かせやがる。

 

 

元気、おまえはズルいよ。三島にここまで愛情を注がれたんだから・・・。

 

 

三島の死後、元気には、いろんなことが待っていますが、その度に困難を乗り越え、ライバルに競り勝ち、世界チャンピオンへの道をつき進みます。その陰には、三島の存在が間違いなくありました。

 

 

三島はこの世からいなくなっても、元気の心にあり続けたのです。

 

 

僕の心にも三島がいます。イケメンで、弱くて、元気に全情熱を捧げ、散っていった・・・そんな三島が大好きです。

 

 

 

三島栄司を熱く語る