今回は、僕の大好きな小説【オリンピックの身代金】を紹介します。

 

著者は、奥田英朗さんです。奥田小説はほとんど読みましたが、この本はその中でも1番好きかもしれないです。

 

 

主要登場人物

島崎国男・・・主人公。秋田県出身。歌舞伎役者のような顔立ち。東大の大学院でマルクス経済学を学んでいるのもあって、思想が共産主義に傾倒している。

 

落合昌夫・・・警察官。警視庁刑事部捜査一課五係所属。30歳。島崎を追う。

 

須賀忠・・・民法テレビ局で働いている。警視庁刑務部長の父親がいる。エリート一家の須賀家の中で、チャラくて浮いた存在。東大在学の時に、島崎と同級生。愛車はホンダS600。

 

物語は上記の3人の視点で書かれています。

 

 

あらすじ

時代は1964年、日本国民がオリンピック開催に沸いていた時代です。島崎は、東大の大学院でマルクス経済学を学んでいました。そんな島崎のもとに、兄・初男が亡くなったという知らせが届きます。初男はオリンピックの会場工事の日雇いとして働いていました。ショックを受けた国男は、プロレタリアートの汗と苦労を体で知るために、初男がいた現場で働くことにします。そこで待っていたのは、過酷な労働と搾取でした。数えきれないほどの生贄と引き換えに繁栄を享受しようとする国家権力に対し、国男はオリンピックを妨害することを計画します。

 

 

奥田作品の中でも・・・

本作は、ユーモアで親しみやすい小説が多い奥田作品の中では珍しい、『重厚』という表現が似合う作品です。どっしりと構えた内容ですが、読みやすさもあって全く飽きません。

 

 

プロレタリア小説

この本はプロレタリア小説ですね。プロレタリア文学とは、厳しい労働と搾取を題材とする文学作品で、有名なのは【蟹工船】などですね。【オリンピックの身代金】はエンタメ要素もあるため、プロレタリア小説に分類されるでしょうね。奥田さんの小説を読んでると、国家権力・共産主義・反体制といった単語が出てきます。これらは奥田作品のキーワードです。本作は顕著に出てきます。それも見どころかなと。

 

 

共産主義

主人公の国男は完全に共産主義に傾倒しています。共産主義はね、うまくいかないんですよね。歴史が証明してますから・・・ロマンはあるんですけどね~。みんな幸福になれる、しかし何かがおかしいとなって、21世紀に至るわけです。奥田小説には他にも共産主義思想を持つ人物が出てきます(サウスバウンドの一郎など)。そのキャラクターたちは、生き生きしてて読んでて共産主義もいいんじゃないかと思ってしまいます。