7月27日
主人が帰ってくるはずだということを信じない豚飼に対し、オデュッセウスはそれが嘘だったなら自分を崖から突き落としてくれと言う。それに対して豚飼は応える。
ξεῖν᾽, οὕτω γάρ κέν μοι ἐϋκλείη τ᾽ ἀρετή τε
εἴη ἐπ᾽ ἀνθρώπους ἅμα τ᾽ αὐτίκα καὶ μετέπειτα, (14-402,3)
客人よ、そうしたらわしは立派な評判や美徳やを
世の人に伝えることだろうて、今の世にも、後の世までも
客人を歓待しておいて命を奪うのだから
πρόφρων κεν δὴ ἔπειτα Δία Κρονίωνα λιτοίμην. (14-406)
そうしたらクロノスの御子ゼウスに気持ちよく祈りを捧げることになるさ
オデュッセウスの話を天から信じていないエウマイオスは、オデュッセウスの「突き落としてくれ」の言も軽く受け流している。「立派な評判や美徳やἐϋκλείη τ᾽ ἀρετή τε」とか「気持ちよくπρόφρων」とかにはいずれも「さぞかし」とおどけた調子さえある。ここにも豚飼の懐の深さが窺える。
連日の猛暑。
こういう時こそ古典を読むのがいいのかもしれない。昔、夏休み前にそう思って本を買い込んだことがあった。ホメーロスの両詩編を読んだのも暑い夏だった。比較的風通しがいいのが勝手口だったので、そこに蜜柑箱を置いて。筑摩書房の菊版文学全集の第一巻で、『イーリアス』が呉訳、『オデュッセイアー』は高津訳だった。ただその時は本当の面白さは分からなかったと思う。