10月5日
しかしその織ってはほどく機織りの策略も「恥知らずな侍女達δμῳάς κύνας οὐκ ἀλεγούσας」により求婚者達の知るところとなる。そこでペーネロペイアはこう言う。
μῆτιν ἔθ᾽ εὑρίσκω: μάλα δ᾽ ὀτρύνουσι τοκῆες
γήμασθ᾽, ἀσχαλάᾳ δὲ πάϊς βίοτον κατεδόντων, (19-158,9)
もはや手立てを見いだす(ことは出来ません)、両親はしきりに促します
結婚しろと、息子は(求婚者達が)食いつぶすのを見て苛立ちます
ペーネロペイアの実父母は詩編の前面に出てこないが、娘の再婚を望んでいたようだ。さて、息子テーレマコスは再婚についてどう考えていたのか。ここでペーネロペイアはただ、テーレマコスが家督の相続者として家の財産がいつまでも消尽されていくのに「苛立っているἀσχαλάᾳ」と述べている。しかし、再婚を促していたとまでは言っていない。
では再婚についてのテーレマコスの本心はどうだったのか。(テーレマコスにとって再婚云々は、オデュッセウスと求婚者達征伐を図っている今となっては過去のことであり、オデュッセウス帰還が見通せなかった時点での話だが)ペーネロペイアが再婚して家を出、財産消尽が止むことを望んでいたのか。ペーネロペイアが再婚すれば財産は分与されるだろうからよしとしなかったのか。あるいは又、財産の如何に関わらず再婚に反対だったのか。そのいずれであるかここでは必ずしも明確でない。しかしペーネロペイア自身は息子の考えが一つ目(即ち、再婚して家を出、財産消尽を止めること)にあると察し、無言の圧力を感じていた口振りだ。ここら辺はあまりに微妙で、母と息子の間でも話題にするのを避けていたのではなかろうか。そしてそれはそれで真実味がある。
フランス旅行中、小村ヴィラールであった料理修行中の青年からメールが来る。日本人に会ったのが初めてだったので驚いた由。だがこちらの方が驚いた、そんな住民三百人くらいの小村の夫婦がやっているレストランに一人で修行しているのだから。地下に客席以上の広さのワイン蔵があったのを見せてもらったことを思い出した。そんなところを見ると、レストランの主はかなり質を追求するシェフなのだろう。青年は前の勤め先の紹介で来たということだったが、よい環境、よい師のもとで、きっと学ぶことが多いに違いない。