獅子座の男が飲んでいたキリマンジェロ | rh534のブログ

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北海道の片田舎に、その男はいまでもいる。
彼とは小学一年から高校三年まで同じクラスだった。
彼は幼くして、父親を失ったが、母親は寡婦のままでいた。
男前で、北大路欣也にそっくり。
バイクに乗り、バンドを率いて、獅子座の王座を満喫する
そんな太陽の下を歩む青春を謳歌していた。
 
私は牡牛座で、彼とは凶角にある。
考え方も、身なりも、交友もまったく逆で
彼は女と遊ぶために、おしゃれだった。
精神的に成熟しており、大人を知っていた。
チャーハンはごま油を使う事も知っていた。
 
その彼が、おれはキリマンジャロだな、と言った。
私はネスカフェゴールドブレンドしか知らなかった。
それから、キリマンジャロは、わたしの遥かなステイタスとなった。
 
ある日彼は私を、地方都市にある、喫茶店なる場所に私を誘った。
「飲ませてやる」
その日私は寝間着のような恰好をしていたが、彼はスーツを着ていた。
私はハリネズミの頭だったが、彼はポマードをきれいに塗っていた。
私は香りに驚き、酸味に飛び上がり、チーズを食べたネズミになった。
 
意外にも彼は田舎の郵便局を仕事場に選んだ。
メガネをかけたとても地味な女と結婚し
母親のために、バリアフリーの豪邸を建てた。
しかし母親は、その家に入ることなく亡くなった。