話は前後するが・・・
次生が今熊野から本町のシャトレ月輪に引っ越しする前。
結婚式も終わり、新婚旅行から帰ってきたときに一枚の絵ハガキがアパートの小さなポストに入っていた。
次生へ
お兄ちゃんは今、十和田湖の水面を宿から見詰めています。
中略
お兄ちゃんはこのように思っています。
要は人生は自分が思い描いたようには進みませんが、挑戦していくのが人生と思っています。立ち止まればそれで終了です。
次生は、頭脳明晰です。自分を信じて前に前に進んでいってください。
そして、人生を終えてください。
次生、見に来てください夕暮れの十和田を、心洗われます。
吉弘
その夜、初子からの電話で吉弘が昨夜枚方の自宅マンションで倒れて救急車で運ばれ、今は集中治療室にいると。
吉弘は、十和田から枚方に帰ってきてその夜倒れたのだ。脳内出血で危篤である。
次生は、考え深げに吉弘からの十和田湖からの絵葉書を見詰めた。
お兄ちゃんはこの絵葉書を、十和田湖を見詰めながら、ふとボクを思い出したんやな?
最初で最後の絵葉書なんやな。
まさに吉弘からの遺言文である。
次生は、何度も何度も読み返した。
嗚咽が止まらなかった。