43 小説 裁判官の子として生まれたキミ | 京都 coffee bar Pine Book

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日々楽しく生きるにはコツがあります。
まずいちいち反応しない事です。
そしてオセロの4つ角を取る事です。
4つ角とは?
1 健康
2 人間関係
3 趣味
4 仕事
コレが楽しく生きるコツです

次生と吉弘のエピソードはおかしな事が多かった。


ある日の事。

京都高島屋の向かいのパチンコ屋に次生と吉弘は入店した。



次生っ?


なに?お兄ちゃん。


落ちてるパチンコ玉な拾って掃除してあげて!

パチンコ玉の上を歩いたら滑って転んだら危ないやろ?

 



わかった。お兄ちゃんは?


お兄ちゃんはここで待っててあげるし、お兄ちゃんもパチンコして次生にお菓子買ってあげるしな。


次生はパチンコホールをくまなく小さな身体を生かしてパチンコ玉を拾ってはプラスチックの青い箱に入れていくのだ。


お兄ちゃん!拾ってきた。いっぱいになりました。


あっ、たくさん拾ってきたなー。感心感心。


付いてきー。次生っ!


どないされます?交換します。景品にします? 


あっ!全部お菓子を適当に入れてくれる?


わかりました。


はい、次生!ぜーんぶあげますで。


うわっ凄いな、たくさんあるな、お菓子。

袋からはみ出てるな、クッキー。

ありがとうお兄ちゃん!


次生?あんな、お母ちゃんとお父ちゃんにはな、お兄ちゃんとパチンコ行ってきた、てな言うたらあかんでぇ〜。わかったか?


うん、わかった。


また、ある日の事。

吉弘が久しぶりに帰ってきた。


あっ!お兄ちゃん!おかえりっ!


久しぶりやな、次生っ!元気か?


どないしたんや?それ?


あっこれな、お母ちゃんに買うてもろてん。

  

かっこいいペンやな?


せやろ?



万年筆って言うねん。


ゲバゲバぴーのオッサン知ってるか?

宣伝してるで?テレビで。


吉弘はテレビを見ないので、大橋巨泉が万年筆のコマーシャルをしているとは知らなかった。



ちょっと貸してみ?


お兄ちゃんのと交換しよか?


お兄ちゃんの万年筆は、赤色の文字がかけました。


次生は、そっと引き出しに入れて二度とその赤色の文字が書ける万年筆は使いませんでした。


こんなことも。


次生?タクシー乗った事あるか?



1回だけあるな。丸物まで行った時。おかあちゃんと。

丸物行った事ある?お兄ちゃん?


あるで、そらある。

丸物て、京都駅前の百貨店やろ? 


そうそう。


タクシー高いやろ?バスの方が安いで?


うん、おかあちゃん言うてたわ、今日は特別やで〜って。


せやろ、高いやろ!


今日はな次生にな、お兄ちゃんタダでタクシー乗せてあげるでぇ〜。


タダで乗れるん?タクシー?


乗れる乗れるがな〜。

せやけどな、お兄ちゃんがタクシーの運転手さんと話すからな、お兄ちゃんが泣いた真似するさかいな、泣いた真似したらな、次生もな、恥ずかしいかも知れんけど泣き真似しいや!

お兄ちゃんも恥ずかしいけど泣くからな!

次生も、大きな声で泣きや。  


わかった、はい。


吉弘がタクシーを高島屋の前から止めました。


どちらまでいかはりますか?


清水道まで、お願いします。


はい、ドア閉めまっさかいに、ボク危ないしな。


はい。

運転手に返事をする次生。


運転手さん?


へっ?


今ね電話かかって来ましてん。

家から下宿先に。


へ〜?


でねっ!うわっーーーー。

泣き崩れる吉弘。むっちゃくっちゃ驚く次生。


ここで今か?ここで?ここか?泣くとこ?


次生が吉弘の顔を下から覗いた。

吉弘は、今ではない!と首を横に振る。


八坂神社の角を南へ走るタクシー。



どないしやはりましたんやーーーー!

驚くタクシー運転手。


どないてなぁ、どないもこないも、あらへんがなーうわっ〜。


だんだんと泣き真似が大きくなる吉弘。


こない小さな弟を残して・・・

なんで〜なんで死んだんや〜うわっーーー、

おかあちゃんーーー。

 

吉弘が安井金比羅宮を過ぎてもうすぐタクシーを降りる清水道に着く手前で信号が赤色に。


停車するタクシー。



ここや!と言わんばかりにボーとしている次生の膝を抓る吉弘!


次生は、ここか!泣き真似するとこか。


うわっーーーーうううわ、うわーあ!

吉弘の膝頭に顔を埋めて泣き真似をする次生。

迫真の泣き真似に驚く吉弘。

よっしゃよっしゃと軽く演技を褒めた合図の肩をポンポン。

頷く次生。


学芸会の主役太郎冠者で父兄から大喝采を浴びた演技力に吉弘も満足していた。



青信号に変わり、タクシーは目的地の清水道に無事到着。


吉弘は、涙目で運転手さんに。

イクラですか?


かましまへん。

かましまへん、タクシー代金かましまへん!


見るとタクシー運転手さんが泣いている。


そうですか、おおきに、助かります。ほれっ!次生もお礼言わなあかん!


えっ?ここは泣くとこちゃうな?こんな事聞いてないな?

と思いながら、次生は泣き真似しながら小さな声で、ありがとう〜。


タクシーを降りた吉弘と次生。


なっ?次生!タクシータダやったやろ?


ホンマやな!お兄ちゃん!お兄ちゃんってやっぱりすっごいなぁ〜。


せやけど次生は上手に泣くなぁー。

お兄ちゃん感心したわ。


最後の運転手に、小さい声で泣きながらのありがとう〜な、あれは見事やわ。最高やったな!


と、大好きな吉弘に褒められても次生は嬉しくはなかった。