33 小説 裁判官の子として生まれたキミ | 京都 coffee bar Pine Book

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日々楽しく生きるにはコツがあります。
まずいちいち反応しない事です。
そしてオセロの4つ角を取る事です。
4つ角とは?
1 健康
2 人間関係
3 趣味
4 仕事
コレが楽しく生きるコツです

松本康三の三男おトンボの次生が合格した中学は中高一貫校であった。

普通に学校に通っていけば高校に進学できるのである。



時に父親康三は、大阪高等裁判所判事から弁護士になるのであるが、ここで一悶着あった。


康三の子供達の教育費も裁判官の手当ではどうにもならなくなってきたのである。


康三の父親、祇園松本精肉店創業者の松本米吉はこれを見越して康三の兄松本両次郎と妻フミェに重々申し付けていた。


ええか?両次郎もフミエも。よぉー聞きや!

康三とこは子沢山や!

ええか?これからの世の中は学問の時代になる!

今までは違う、これからは学問の時代つまり、大学を卒業する事が当たり前の時代がきます。でや、お金がいる。

大学卒業までは、康三とこの子供の面倒見てやってや。ぎょうさん貯めて置いた。

100人くらい潔子が子供産んでも大丈夫なだけ資金はある。

ええな?わかったな?両次郎、フミエ!独り占めしたらあかんでー!両次郎!フミエ!


ほんでな、フミエと仲が悪い、両次郎の妹の令子とこも子供できてるさかいな、令子とこも面倒見てやってや。医師にする、て言うてるさかいな、たくさんいるからな、お金が。ええな!


口を酸っぱくして何度も何度も、従業員の前でも米吉は証人としての含みもあろうか、敢えて話していたのである。


しかし・・・

この約束は守られる事はなかった。


両次郎のフミエが自分の兄弟姉妹を面倒みるが、松本に資金は回って来なかった。


この因果の応報は、キッチリと結果として現れた。

現在松本精肉店が祇園で営業していれば、たいそうな老舗であったと思われる。

が、しかし、如何せん両次郎とフミエでは後継者が育つわけがない。


どんなに繁栄している会社や店舗でも、嫁いで来る嫁にかかっているのである。

勿論跡継ぎの子孫が力ある人間力があれば別ではあるが。


康三は、学費を稼ぐために新設の京都産業大学の法学部設立の為にある筋からスカウトされたのである。

本来特別公務員の立場である裁判官は、勿論アルバイトは厳禁である。

アルバイトがわかれば即刻クビである。


そんなリスクを抱えながら康三は、京都産業大学でアドバイスする契約をしたのである。


これが、大阪高等裁判所に漏れて白日の元に晒されるのであった。


松本くん?

はい!部長(康三の大阪高等裁判所の上官裁判官)あのな、キミな?ちょっとわたしの部屋まで来てくれるか?


はい?今ですか?今から法廷ありますが?


いや、17時頃に来てくれるか?


わかりました。17時に伺います。


康三は嫌な予感がした。転勤命令にしてははや過ぎる・・・