山元町で聞いた、とあるおばあさんの話です。
せっかくなので、記事に残しておきます。
そのおばあさんは、常磐線の坂元駅のすぐ近くに住んでいました。
もともと足腰があまりよくないので、あまり出歩かないのですが、
その日はたまたま仙台に用事があり、電車で出かけていました。

そして用事が済み、電車で帰っているときのこと。
いつもはそんなことは無いのですが、電車の中でついつい居眠りしてしまい、
自分が降りるはずの坂元駅を過ぎてしまいました。
あっ、と気が付くと、もう隣の新地駅。
ちょうど、ホーム向かいに反対方向へ向かう電車が止まっていたので、
その電車に乗り換えました。
と、そのとき。
あの地震が起こりました。
電車は激しく揺れましたが、
特にケガ人も無く、おばあさんも無事でした。
おばあさんは電車に乗ったまま、
電車が再び動き出すのを、隣に座っていた人とおしゃべりしながら待っていました。
もし津波が来ても、電車だから大丈夫よね~、なんて言いながら。
しかし、いつまでたっても電車は動きません。
そして車掌さんが来て、電車を降りるように言いました。
新地の駅にはお巡りさんがいて、電車の乗客を一列に並ばせ、
列の先頭と最後尾にお巡りさんが一人ずつついて、
海と反対方向の国道に向かって歩き出しました。
しかし、おばあさんは足腰が悪い為、
列から遅れだします。
「もう、私はいいから先に行ってください。」
とおばあさんはお巡りさんに言いましたが、
お巡りさんは、たまたま通りかかった軽トラを止め、
おばあさんを乗せて逃げるよう頼みました。
そして、おばあさんと電車の乗客全員が無事に国道に着いたころ、
あの津波は、駅を襲っていました。
津波は、国道脇の役場のすぐそばまで届いたそうです。
新地町には行きましたが、
駅は影も形もありませんでした。
ほんとに間一髪だったのですね。
このおばあさん、たまたま居眠りしなければ、
そのまま自宅に帰って家で被災したでしょう。
おばあさんの家があった坂元駅周辺にも行きましたが、
家という家は全て跡形も無く流されていました。
この話は、山元町役場近くの地元の方から聞いた、
ご友人の体験されたお話です。

坂元駅のホームから。