韓流の街、東京・新大久保も人通りが大幅に減ったと言う。
この8月に起きた「竹島問題」の影響は、それほど大きかった。
草彅主演の舞台も一時は上演が危ぶまれた。
しかし、その危機を回避したのは、国境を越えた人と人との結びつきだった。-
草彅剛(38) チャ・スンウォン(43)と、反日溶かした"炎の友情"
人気韓流ドラマ「最高の愛」のトッコ・ジン役で女性ファンの心を"ドゥグンドゥグン
"させたチャ・スンウォン(42歳)。
そんな彼がSMAPの草彅剛(38歳)と共演と言う夢のような組み合わせに、
公演前から話題を呼んでいた舞台「ぼくの炎に戦車を」が、11月3日に初日を迎えた。
100年前の韓国を舞台に、両国の伝統文化を、命を懸けて守ろうとした日本人の物語で、
草彅が扮するのは日韓両国の関係に心を痛める日本人青年教師。
スンウォンは、放浪の芸人集団「男寺党(ナムサダン)」の演技者を演じ、
このふたりが国境を越えた友情を築く感動のストーリーが描かれる。
初日に行われた会見で、草彅はこう発言した。
「韓国の俳優のかたと演技をしたことがなかったので、刺激的に毎日を過ごしています」
これを受けてスンウォンも、
「本当の意味での良い友情関係が築けました」
と仲の良さをアピール。
スンウォンには専属の通訳が付いていたが、韓国語の堪能な草彅が率先して通訳するほど、
すでにふたりには固い絆で結ばれていた。
しかし、ここにいたる案出には数々の紆余曲折があった。
今年8月10日、韓国の李明博大統領(71歳)が竹島に上陸した。
日本政府は、ただちに韓国に猛攻撃を行ったが、これを機に日韓両国の間に緊張が走り始めた。
そして追い打ちをかけるように、8月11日には、ロンドン五輪・男子サッカー3位決定戦直後に、
韓国代表の選手が「独島(竹島)はわが領土!」と主張するプラカードを掲げてピッチを走り、
"竹島"は国際的に問題へと発展していった。
終戦記念日前日の8月14日には、李大統領が「(天皇が)韓国を訪問したいなら、
独立運動をして亡くなったかたたちを訪ねて、心から謝罪をする必要がある。
"痛惜の念"という単語ひとつを言いに来るというなら、訪韓の必要はない」
と天皇陛下に謝罪を要求すると、韓国国内の"反日"ムードは最高潮に達した。
一方、日本国内では、韓国大使館前では連日抗議デモが行われ、
8月下旬にある全国紙が行った世論調査では、「韓国に対する印象が悪くなった」と
答えた人が50%に上った。
そうした、"反日""嫌韓"の空気が蔓延していた9月初旬、"日韓友好"のテーマの
【ぼくに炎の戦車を】の公演開催が発表された。
だが緊迫した状況かということもあってか、一部からはこんな声が聞こえてきた。
「ちゃんと公演できるのか?」「抗議が殺到するのでは?」「会場でデモが起こったら、どうしよう」
どれもが上演を危惧するものだった。
加えて懸念されたのが、スンウォンの"反日"疑惑だった。
Youtubeにアップされた、彼がかつで出演したテレビ番組での映像が、ネット上でやり玉に挙げられたのだ。
番組内で「海外で悪いことをするときは、"日本人だ"と言えばいい」と発言するスンウォン。
その映像の中の彼は、日本を蔑んでいるように見え、「こんな人間を日本に入れるな!」と
彼を非難する書き込みが掲示板などに相次いだ。
そうした"反日"の噂がひとり歩きしていたこともあり、舞台関係者の不安は増すばかりだった・・・。
「8月末に予定されていた制作発表記者会見も、日韓関係の悪化が理由で中止になりました。
いよいよ稽古が始まる直前という段階になっても、スタッフの中からは"やはり延期にしたほうがよいのではないか?"
と言う声が、数多く上がっていました」(舞台関係者)
そんな中、9月中旬に日本で稽古が始まった。
「やはり著日はどことなく重苦しい雰囲気が稽古場を包んでいましたね。」(前出・舞台関係者)
その夜、親睦を深めるため、草彅、スンウォンに加え、香川照之(46歳)、広末涼子(32歳)らの出演者とスタッフたちで食事会が開催された。
場所は、都内にある稽古場近くの焼き肉屋。どことなくしんみりした空気が漂い、肉のジューッと焼ける音だけが聞こえていた。
そんなムードを払拭したのが、スンウォンだった。
「彼は"むしろこういう時期だからこそ、この舞台をやるべきだ"って熱弁をふるったそうです。
"ぼくらの舞台を見れば、絶対に両国の間に友情が成立すると、観客に伝わるはず。
それに政治と舞台は別。役者はよい芝居をつくりあげることだけ考えましょう"って。
草彅さんや香川さんは、この言葉に感動して、"絶対いい舞台にしよう!"って、一致団結いたんです。
その日の宴は深夜まで続き、草彅さんも、スンウォンさんと韓国の政治や伝統、芸能について話していたそうですよ」(前出・舞台関係者)
それまで関係者が抱いていたスンウォンの"反日"のイメージ、さらに両国スタッフの間にあった"反日嫌韓"の壁を溶かした"炎の友情"が生まれた夜だった。
こうして、反日イメージが解かれたスンウォンだが、そもそも実際の彼は親日家だと言う。
彼が、まだ日本でブレイクする前からプレイベートで何度も来日し、
映画「ブラックレイン」を見て、主演の故・松田優作さんの虜になったことや、サザンオールスターズのファンであること、
日本の温泉が大好きであることなどを公言してきた。
5年前、草彅が司会を務めるバラエティー番組「チョナン・カン」(フジテレビ)で対談した際、
スンウォンは、草彅の主演ドラマ「僕と彼女の生きる道」(フジテレビ)を見て感銘を受けたことを明かしている。
「Youtubeのスンウォンの"反日"発言も、実際は一緒に出演していた女性タレントに向かって
"(この人は)海外で悪いことをするときは日本人のふりをするんだ"と冷やかしただけで、決して自分の事を言ったわけではなく、
あたかも彼の考えに見えるように一部を抜粋して編集されて流されてしまっただけなんです」(韓国芸能関係者)
実際、スンウォンんは来日直前、韓国国内でメディアに「日本では今、"嫌韓"の空気が蔓延しているが?」と話を振られると、
「国同士の文化交流の意味もある今回の仕事に抜擢された以上、韓国の俳優として骨が砕けるほど最善を尽くしたい。真心を尽くして演技すれば通じないはずはない」と語っている。
「韓国において、著名人の親日的な発言はいまだにタブー視される空気があります。
ましてや竹島問題が大きくと取り沙汰されていたあの時期ですから、
よほどの覚悟がなければ言えませんよ」(前出・韓国芸能関係者)
一方の草彅も韓国への思いは人一倍強い。
韓国映画「シュリ」を見て、主演俳優のハン・ソッキュ(48歳)の大ファンになった草彅は、
「いつか彼と共演したい」と韓国語の猛勉強を始めた。
’01年には、前述のトーク番組「チョナン・カン」がスタートし、多くの韓国人俳優と対談を重ね、
韓国文化や韓国人について学んだ。
「彼の韓国語のスキルは、相当高いですよ。
韓国人タレントのユンソナ(36歳)に"本当にお上手ですよ"と絶賛されるほど流暢なんです」(芸能関係者)
’08年には、李大統領との対面も果たしている。大統領からは「もっともっと韓国で活躍してください」と激励され、
「両国の架け橋になりたいです」と韓国語で即答してみせた。
そんな思いが、今回の舞台出演にもつながっているのだろう。
稽古は、朝9時から深夜まで及ぶハードなもので、加えて日韓の役者・スタッフがそろっているため、
言葉の壁もあった。
「みんなカバーし合って稽古に臨んでいましたよ。
韓国語のセリフの多い香川さんにスンウォンさんと草彅さんが、ふたりで発音を教えてあげていました」(前出・舞台関係者)
今回、スンウォンは大道芸人役ということで、韓国から大道芸の指導員を招き、
普通なら習得に1年かかる芸を1ヵ月で覚えたと言う。
「スンウォンさんは、安全装置もなく、下にマットを敷いただけの状態で、毎日綱渡りの訓練をしていました。
そんな彼に"がんばれ"といつも韓国語でねぎらいの言葉をかけていたのが草彅さんでした。
またスンウォンさんは、結構冗談を言ったりするんですけど、
韓国語のわかる草彅さんは、ちゃんとリアクションを取ってあげていて、
ふたりの間には和気あいあいとした雰囲気が流れていましたよ」(前出・舞台関係者)
冒頭の会見で、舞台初日前日には、ふたりで食事に行ったことを明かした草彅。
そのときスンウォンは、韓国では"元気が出る"食事として有名な「サンナクチ」(たこの刺身)を紹介したと言う。
「"公演が始まっても1週間に2回はナクチを食べに行こう"って誘われました」
スンウォンはそう話していたが、ふたりはこんなプライベートな約束をするほどの
親しい関係を築いたようだ。
そして、草彅は会見の最後にこう語った。
「ボクとスンウォンの友情が舞台で芽生えることによって、お客さんにも伝わるものがすごくある。
いつの時代でも、ともに生きていくという気持ちがすごく大事なんだなって思います」
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