朝、ゴミを出すために玄関のドアを開けると、一日中ずっと角にうずくまっていたカナブンが、ドアのすぐ目の前まで歩いて来ているではありませんか!何というタイミング。危うく踏み潰すところでした。


私は思いました。


「生きていたのか!そしてお前は生きるのを諦めたわけじゃなかったんだな。」と。


何だか嬉しくなり、一旦部屋に戻ると、冷蔵庫にあったフルーツゼリーを一欠片スプーンに乗せ、カナブンの目の前に落とす。


「さあ、食え!」とばかりに私はカナブンを掴み、ゼリーのカケラの上に乗せる。


カナブンは思った以上に元気に暴れ回り、ゼリーには目もくれず、羽を広げて飛んで行きました。


そしてすぐ、頭の中に声が聞こえてきました。


「余計なお世話だ。お前の施しなど受けない。私はお前とは違う、自分の力で羽ばたいてここから飛び立っていけるのだ。」と。


二度と、いませんように。