今、僕が思いを届けたいひとは、
僕へほとんど関心がない。
ガラスのような澄んだ目で、
世界を見ている。

花園を閉ざして。

花は枯れてはいないし、
さくらさんの肉体そのものも、
とても溌剌としていて、
時折upされる身体の一部に、
僕は吐息を漏らさずにいられない。

でも、
楽園を閉ざしても護っても、
暴虐的な土砂は華奢な彼女を圧し潰す。
汚す。
その悲鳴は、
幼い頃に僕が発したものと似ている。

全力で逃亡した僕は、
結局は図太かったのだと思う。
さくらさんの翼には、
生まれ持った大きな傷があって、
逃げ切れない。

僕が彼女に惹かれていることは、
もはやいちいち述べないけれど、
彼女の瞳には、
僕への憎悪があるように思う。

手を伸べる、僕の手は、
アジールから伸びていて、
いつでも引っ込めて彼女を見捨てられる。
劇の、絵画の、観覧者に過ぎない。


故郷をいづれの春か行きて見む
うらやましきは帰る雁がね



こんなことを彼女は滲ませない。
滲ませないけれど、呟きが重なれば、
僕は知る。
僕は眼を逸らす。
同情しながら置き去りにする。

だから彼女が僕に心を許さないのは、
当然で、
ガラスのような瞳で僕を見るけれど、
それでも、
僕への言葉にわずかにだけ、
通う薄い薄い血の色は、
優しいさくらさんの、
いのち。