上野の森の国宝を見る

国宝は雄弁に歴史の情念を語る

しかし制作した個人の情念は伺い知ることはもはやできない

跡形もない個人の生きざまの代わりに

作品のみが時代を超越し

その時代に確かに存在した情念を甦らせるのだ

自由などなかったはずの時代の鍛錬は

もしかしたら苦役に匹敵するのか


上野の森の大道芸人を見る

芸は技とはならず

時代の風俗に生きる個人の情念を映し出す

自由の中の風俗に支えられた個人の情念は

個人とともに自由とともに消えてゆくのだ


日が沈み落ち葉が風に舞いながら

彫刻の森にの暗闇の夕闇を告げる

遠くの空はまだ明るさを残す

二つの世界が映し出される


上野の森を見て

上野の池のほとりでうなぎや洋食を食べるという

粋の時代を再現してみる


上野の池のほとりの鰻屋も

最後の銀幕のスタ-も

遠くの空の明るさと同じであるという

美しさに想いを馳せて