窓から陽光が差し込む。
それが合図だったかのように、目覚まし時計が鳴り始めた。
何度叩いてもなかなか、鳴き止まない。
「そういえば...ボタン式、だったっけぇ...」
ようやくそれに気が付き、まだ睡魔に囚われている体をむりやり動かし、ベッドから転げ落ちた。
「痛ってぇ...」
これが日課だ。こうすれば睡魔が離れてくれる。
「しかし、落ちる時妙に体が軽かったような...」
そんなことを疑問に思っていたが、対したことでもないと思い受け流しそうとした。だが...
体の肌がまるで病人のような白色をしていて、しかも細く見えた。
何故こうなっているのか、過去の記憶を手繰り寄せてみたが...何も思い浮かばない。
思い浮かぶことはせいぜい、自分についてのこと、趣味など、あと日々の日課そのようなことだ。
しかしそれよりも、何か大事なことを忘れているような...
「待てよ...俺、何て名前だ...。」
そうだ。名前がわからなかった。
これがなによりも、心に刺さった。
なぜ、こんなにも体が変化しているのか?そんなこともうとっくに遠い昔のことのように頭から離れていた。
名前、それは自分がこの世界に存在するという証明みたいなものだ。
それが思い出せない、って...
「いや...落ち着け」
自分の持ち前の冷静さで、まず呼吸を整えて心身を落ち着かせた。
それから、自分の中の記憶を探った。
「また、出てこない...」
ちょっと不思議など忘れだと思っていたが、こうなると、もうただことじゃない。
そこで、俺はしょうがなく日々の日課「学校に通うこと」を決意した。
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部屋から出ると、コショウと塩の効いた香りがしてきた。母親が料理を作っていた。
今の記憶では、俺に母親と妹がいるのはわかっている。しかし同様に彼女らの名前もわからない。これは想定内だ。
俺はいつも通り朝食が出来るまで、食卓で時間を潰した。対面して座っている妹も同じような感じだ。
すると、母親が料理を持ってきた。
手には一人分の料理しかなかった。
俺はなんかの間違いかと思い、厨房の方をみたが、料理器具などが既にしまわれていたため
もうこの時間には何も作らないのだと伺えた。
わけもわからず、走って家から飛び出した。