台湾との交流に先だって、生徒たちにいくつか事前学習しておいてもらわなければならないことがあります。一つは歴史的なことです。1895年から1945年まで日本が台湾を統治したこと、その後中国国内の内戦の結果
敗れた国民党軍が台湾に渡って今の政府をつくったこと、1972年に日本は中国と国交を結び 台湾との正式な国交を断絶したことなどです。

 

実は歴史的な事実よりも最近の出来事の中で、ぜひ知っておかなければならないことがあるのです。2年前の東日本大震災の際、日本は世界各国から様々な援助をしていただきました。その中で200億円の義捐金を送ってくれたのが台湾なのです。この額はアメリカを越えて世界で最高額でした。これは、政府、企業、個人、全ての規模で募金活動が展開された結果です。様々な歴史的経緯の中で台湾人が日本人に示してくれた率直な好意だったのです。今回の鹿港高校訪問での挨拶の際、私はこの支援に対するお礼を全校生徒に一言いいました。その瞬間すごく大きな拍手が返ってきました。交流の際、地震被害への援助に一言お礼を言うことは重要です。

 
震災のときに 台湾全土で日本への支援活動が起こりました
台湾の映画を2つ紹介します。
どちらもウェイ・ダーション(魏徳聖)という同じ監督がつくった最近の映画です。1つは「海角七号」という2008年の映画で、台湾の歴史上最大数の観客を動員したものです。このタイトルの意味は、岬七番地という住所を表しています。日本統治時代の住所で現在の台湾では使われていないため、60年前にこの住所あてに書かれた7通のラブレターが届かないままになっているのです。主人公は、台北で成功できなかった台湾人男性ミュージシャンのアガと、やはり売れない日本人女性モデルの友子です。このカップルが、台湾南端の地で再度バンドを結成し前座の演奏を成功させるとともに、60年前の日本人男性教師が台湾人女性の恋人に書いたラブレターを届けるというストーリーです。日台間の歴史と、台湾社会の現状がよくわかる映画です。

 
「海角七号」 現在と60年前の二組のカップルのラブストーリーです

もう一つは、2011年の「セデック・バレ(賽德克·巴萊)」という映画です。タイトルの意味は「真実の人」です。日本統治下の1930年、台湾で起きた先住民族・セデック族による抗日暴動「霧社事件」を描く歴史超大作です。とても悪い日本人が出てきて先住民族を弾圧するので、日本人として心が痛みます。また、最終的にこの反乱軍は日本軍によって完全に鎮圧され、あるものは戦死しあるものは自殺していきます。しかし、この映画は、日本を非難するために撮られたのではなく、見過ごすことのできない歴史的事実を率直に描いたものであることが感じられます。「自分たちの民族の生き方を全うするために、勝てないことがわかっている相手に立ち向かう」ということを頭目のモナ・ルーダオが言っています。
 
「セデック・バレ(賽德克·巴萊)」 台湾で起きた先住民族・セデック族による日本に対する反乱を描いています。


REXでオーストラリアへの派遣を経験させていただいた私が、台湾や中国のことを多く語るのには違和感を感じる方がいるかもしれません。「生徒たちに世界を見せたい」という思いは同じです。この思いを共有することで、気持ちを一つにできるのではないかと思います。