-死合わせ-


「はっ…はっ……」

校庭へ続く廊下を俺とナホは走る
俺の予想が正しければ校庭で戦っているのは火織先輩と日向のはずだ。だが――どうも変な感じがする。よく考えてみると、保健室を出ようとしたときに聞こえた轟音は一体何の音なのだろうか。だって――

あの二人は音のする武器なんて所持していなかったじゃないか

どっちかが拾ったと考えることも出来るけどそれは納得できない。火織先輩は日本刀、日向はナイフ。二人ともこれだけあれば十分に戦うことが出来る。音のする――銃器のような物は必要ない
だとしたら考えられることは1つだけ

第三者の介入――

でもこれは……これだけは考えたくない
だってそうだろ?今現在生き残っているのは、俺、ナホ、火織先輩、日向。それに……

宵桜先輩の五人

もしあの轟音が第三者の介入だっとしたら……それは――宵桜先輩が発生させた音となる。止めに入ったのか、はたまた――二人に攻撃を仕掛けたのか
後者の可能性は低いと思うが、前者の場合は宵桜先輩の安全が気にかかる。あの二人の戦いを止めに入って無事でいられるはずがない

校庭まであと少し。そこで全てが分かる
俺は走る速度をあげた。ナホも俺に合わせて走る速度をあげてくれる

あと10メートル

もうすぐ……

あと5メートル

「……はぁ…はぁ……」

飛び出したと同時に俺は立ち止まり、息を整えながら周りを見渡す

「ケン、あれ――」

ナホが指を指す方向を見る
そこで誰かが倒れているのが分かった。目を凝らしてよく見てみる

「日向……!?」

キラリと光るアクセサリーが目に入った
あれは日向がいつも髪の毛につけている銀色のアクセサリーだ。それにその横に倒れている赤い髪の背が高めの女性は火織先輩
俺は疲れた足を無理矢理動かして日向と火織先輩のもとへ向かう

「日向!火織先輩!」

俺は日向を抱き起こすと同時に生暖かい何かが右手に触れた
恐る恐る自分の右手を見る。そこには赤い血がべったりと付いていた
ぽつん、ぽつんとその手に雫が落ちる
空を見上げてみる。黒い雲の中から冷たい雫がいくつも、いくつも落ちてきていた

「く…そ……」

やがてそれは雨となって俺たちを少しずつ濡らしていく
どれぐらい時間が立っただろうか。俺はポケットに入っている手紙の存在を思い出した
雨のせいで滲んでしまった木ノ葉の手紙を俺は火織先輩の元へ持っていく

「それは……?」

「木ノ葉が……火織先輩に宛てた手紙だ」

俺はしゃがみ、火織先輩の手の中へ手紙を入れようとした

「読んで……あげようよ。巫先輩に……」

俺は無言で頷いて封を破り、中の手紙を取り出して目を通す。その手紙には木ノ葉らしいまるっこい可愛い字でこれだけ書かれていた

『大好きです。火織先輩』

口に出すと同時に、手紙に幾つかの水滴が落ちる
最初は降り注ぐ雨だと思っていた。だから今落ちたのが自分の目から零れた涙だと気づくのに時間がかかった。あれだけ泣いたのに、この涙は今も絶えなく流れ続ける

「う…うぅ……」

俺の隣でナホも涙を流していた
ザーと、雨はどんどん激しさを増していく。まるで俺たちの涙を隠すかのように
そして俺は気づいてしまった
知りたくない――真実に

「健太くん、三奈穂ちゃん」

後ろから投げられた言葉に俺は振り向かずにただ俯いていた

「そんなところにいたら風邪引いちゃうよ、二人とも」

そう言いながらゆっくりとこちらに近づいてくるのが分かる

「なぁ――」

俺の言葉にピタリと後ろから聞こえていた足音が止まった

「なんで――こんなことしたんですか」

二人の死因は銃殺だった
そして二人の周りには銃器は存在しない
ここから行き着く結論は……一つだけ

「宵桜先輩……あなたが――《リピーター》だったんですね」

え?と驚きの表情を浮かべているナホを無視して俺は立ち上がり、振り返る
そこには大型の銃器を肩に背負って佇む宵桜先輩

「気づいて……いたんだね、健太くん」

「本当に宵桜先輩が《リピーター》なんですか?」

そう聞くと宵桜先輩は頭をちょこんと下げ、はぁとため息を一つついた
やがて先輩はゆっくりと顔をあげる

「そうだよ、健太くん。私が――《リピーター》だよ。そして……」

宵桜先輩はふふ――と、笑う

「この繰り返す世界を創り出したのは、私――宵桜満月です」


Chapter 30 End