本記事では、以下の内容について解説しています。

ぜひ、最後までおつきあいください!

 

  • メンタルヘルス不調による休職者や退職者は増加傾向
  • 他の疾病とくらべて休職中または復職直後の退職率が高い
  • 再発を繰り返すほど再発率が高くなる悪循環になる

 

  メンタルヘルス不調による1ヵ月以上の休職または退職者がいる事業所が増加している

 

厚生労働省が行う労働安全衛生調査によると、「メンタルヘルス不調により連続1ヵ月以上休業または退職した労働者がいる事業所」は増加していることがわかります。調査対象となった事業所全体としての増加傾向にみられる特徴として、事業規模が大きくなるほど、そのような従業員を抱えている割合が多いことも示されています。

 

 

休職者増加のグラフ

 

職場のメンタルヘルス対策、働く人々のメンタルヘルス保持増進は、社会全体の重要な課題として認識されており、ストレスチェック(2015年12月から義務化)などの施策もおこなわれています。しかし、メンタルヘルスの不調者が増加しているという現状をみると、さまざまな対策も今のところ効果的に機能しているとはいえないのかもしれません。

 

 

  メンタルヘルス不調による休職は他の疾患による休職よりも退職率が高い

 

うつ病などのメンタルヘルス不調による休職者の特徴は、体調が十分に回復せず、復職できずにそのまま(復職してもその直後に)退職にいたるケースが多いということです。

 

独立行政法人「労働政策研究・研修機構」による調査(2012年)によると、過去3年間にメンタルヘルス不調で休職した社員の42.3%が退職したという結果が報告されています。

 

これは全疾病の平均37.8%を上回っており、メンタルヘルス不調から回復し、安定して就労することの難しさを示しています。メンタルヘルス不調のこのような傾向は、不調をきたした本人ばかりでなく、人材を失ってしまう企業にとっても大きな損失になっていると考えられます。

 

2006年には厚生労働省から「労働者の心の健康の保持増進のための指針」が公表されており、現在、各企業は従業員のメンタルヘルス不調の発症を予防し、また発症した場合に適切かつ速やかに対応すべく、さまざまな制度を構築しています。また、2017年からは健康経営優良法人の認定制度(※)も始まっており、メンタルヘルス不調に対する企業側の取り組みは、今後ますます推進されていくでしょう。

 

組織的なメンタルヘルス対策が、まだ十分に機能しているとはいえない状況があるとはいえ、より効果的な対策に向けて、社会全体で取り組み始めていることは間違いありません。

 

※「健康経営」とは、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践することです。企業理念に基づき、従業員等への健康投資を行うことは、従業員の活力向上や生産性の向上等の組織の活性化をもたらし、結果的に業績向上や株価向上につながると期待されています。

 

 

  メンタルヘルス不調は再発率が高く、再発を繰り返すほど再発率が高くなる

 

メンタルヘルス不調の特徴として、症状が回復したように感じていても、しばらくすると再び症状が悪化しやすいことが挙げられます。たとえば、うつ病であれば、初発であっても60%程度は再発するといわれており、再発をするとさらに再発率が高くなるといわれています。3回再発した場合の再発率は90%に至るともといわれており、回復がほとんど困難な状態に陥ってしまうケースも少なくありません。

 

 


メンタルヘルス不調の発症を予防することはもちろん重要ですが、発症した際に、そのメンタルヘルス不調を繰り返さないようにしっかりとした回復を目指すということも同様に重要です。

 

多くの場合、症状が軽快してくると「もう大丈夫」と考えてしまい、心身のセルフケアがおろそかになりがちです。というのも、メンタルヘルス不調を生じた本人にとしては、「周りに迷惑をかけて申し訳ない」「早くもとの生活を取り戻したい」「早く仕事に復帰しなければ」と不安や焦りが強くなるからです。

 

しかし、そのような不安や焦りから、不十分な回復のままで通常の生活を送ろうとするのは、再発のリスクを高めてしまっていることになるのです。このリスクに無自覚なままで復職をしてしまうと、セルフケアをするよりも、遅れを取り戻そうと無理をして頑張りすぎてしまうことにつながります。

 

不十分な回復のままで無理をすると、当然すぐに疲労困憊してしまい、心身はすぐに不調に陥ります。しかし、多くの場合、不調であることをすぐに相談するのをためらってしまい、がまんを重ねているうちに、ついには出社できなくなり、症状の再燃から再休職や退職に至るという悪循環になるのです。

 

このような悪循環に陥らないためには、休職期間中をいかに過ごすかが重要になってきます。大切なことは、休職期間に入ってから、不調が過ぎ去るのをただ待つだけの休養をするのではなく、「再発しないための過ごし方」を積極的に取り入れていくことです。

 

では、「再発しないための過ごし方」とは、どのような過ごし方でしょうか。ポイントとして、次の4点を挙げておきます。

  • 疾病理解
  • 休職要因分析
  • 再発予防策
  • フォローアップ体制作り

 

具体的にどのようなことに取り組む必要があるのか、それについては次回以降の記事(こちらから)で解説していきますので、ぜひご覧ください。