(前回からの続き)
1社、面接の日程を企業からもらい、3日後に面接。

『五反田か。ちょっと遠くなるけどまぁいっか』

何とここで既に受かる事を前提とし、保険をかけて別の就職先を探す事をしなかった。
書類審査で3つも落ちている現状があるのにも関わらず、面接には合格するつもりでいたのだ。

当然、面接の日まではダラダラとゲームをして過ごし、会社に休日をもらっていざ面接へ。

事務所は募集サイトに乗っていたようなきれいなところではなく、PCのケーブルもまとまっておらず、
汚らしい職場だった。

(参ったな・・・ちょっとここは失敗したかも。受かっても断るか。)

と、上目線から先の事を考え、面接は始まる。
普通の面接だったのだが、何故か面接官は不満そうな表情を浮かべている。

面接官:では面接は以上になります。

僕:ありがとうございました!宜しくお願いします!

面接官:あ、最後にいくつか注意点・・・というか突っ込みどころがありまして・・・

僕:え?何でしょうか?どうぞおっしゃってください

(何だよ、ったく)

面接官:まず、この履歴書に書いてある経歴と、その後にメールで頂いた経歴に差異があるのですが・・・

(・・・しまった・・・)

僕:あ・・・すいません、履歴書の方が正しいです。

面接官:後、この住所のこの部分にふりがなに書かれている部分が漢字のほうに書かれていないようです・・・

(うそ!!)

僕:あ・・・す、すみません

面接官:最後に・・・ボタンダウンのボタンが止まってませんよ?

僕:あ、し、失礼しました・・・

(ダ、ダメだこれ・・・)


ご存知の通り、面接の最も重要な書類、履歴書にはいかなるミスも許されない。
こんな書類でミスをするようであれば、仕事でミスをするに違いない、と思われるからだ。
ボタンダウンの件に関しては、敢えて外す事もあるのだが、やはり面接の時ぐらいは止めておくべきだった。

結果だが、何と僕が家に到着する前に不採用のメールが届いた。
※僕はPCメールに届いたメールを携帯メールに転送されるように設定していたため、確認できた。

『そりゃあ・・・そうだよな・・・。ちょっと甘く見すぎてたか。』


少しうなだれて、


『ま、いいよ。どうせ断ろうと思ってた会社だったし』

と思った瞬間、何とも言えない嫌な気分に襲われた。



胸が締め付けられる。


鼓動が早くなる。


額に冷や汗がにじむ。



『ダ、ダメだ。この考えは。』

『俺は落とされたんだ。”断る”というのは受かった人が考える言葉だ。』


ダメ人間に陥る瞬間を味わった。
同時に、自分が置かれている状況を理解した。

【再就職先の面接に提出する書類にミスがあった】

これが自分がどれだけ甘い考えか、思い知った。

更に、就職活動に消費する時間。
・WEBでの応募
・書類審査
・面接
・面接結果
・2次面接
・面接結果

これら、早めに見積もっても5週間はかかる。
退職までもう1ヶ月も無い。






しまった・・・
時間が足りない・・・

こんな簡単な計算に、気づく事が出来なかった。

何て考えが甘いんだろうか。
何て無計画なんだろうか。

思えばメッセンジャーで送信先を間違えた時点で、自分の考えの無さは露呈していた。

何とか無職の状態だけは防がねば。

試行錯誤をし、あるわずかな可能性が見えてきた。

(続く)
(前回からの続き)

解雇まであと3ヶ月。

解雇宣告されてから3ヶ月の猶予があったのだが、『早く内定をもらっても困るしな・・・』と思って2ヶ月間は何もしなかった。今思えばこの判断が完全に間違っていた。

タイトルに『ニート』と書いてあるので自慢にはならないが、僕は中途採用の面接を受けて、落ちた経験は少なかった。
今回の会社は2社目だが、いくつか受けて、受かった中から選ぶ、といった具合で今まで来たため、『離職』という恐ろしさを知らなかったのだ。

さて、退職するまで後1ヶ月。
そろそろ始めるかな、というノリでFindjobやリクナビ等のリクルーティングサイトで探し始め、WEB履歴書を埋めていく。

『俺もこの2年半で成長したもんだよな』

口元が緩みながらスキルやアピール欄を埋めていく。

2年半。

一般企業の2年半なんていったらまだまだ新米で、ほっぺたが赤いイメージだが、
この会社は人がどんどん辞めて、新人がどんどん入るため、2年半『も』働いている、という。
辞める理由は人それぞれだが、ベンチャー企業特有の超残業や、岩井(前記事参照)についていけない、という理由がほとんどだった。

4社に応募し、余裕でゲームを始め、採用結果を『待つ』日々を無意味に過ごす。
残り1ヶ月となると、引継ぎ等もほぼ終わり、19:00に悠々と帰宅する日々だった。


4日後、採用の結果の通知が来る。

『さて、どんなんかな』

PCを立ち上げ、メールを開き、メール記載のURLをクリックしてリクルーティングサイトへアクセスし、結果を見る。

1社目:面接
2社目:書類落ち
3社目:書類落ち
4社目:書類落ち

正直びっくりした。
昔のを見てるのか?と思うほど、わが目を疑った。

しばらく唖然とし、面接の日程の返事を打ち込み、返信する。

プロフィール欄がおかしいのか?
アピールポイントが焦点ずれてたか?
誤字脱字でもあったか?

『あれ』を信じたくなく、必死に問題を探した。
しかし特別おかしなところ等は無かった。

まさかな。いや、そんなはずは。

自分を誤魔化しつつ、また返信を『待つ』日々を送った。

(続く)
事件はもう5ヶ月も前になる。

『あぁ!?そんなん関係無いやろ!』
『何やってんねんお前!』

叱責を受けていた彼は僕のチームのリーダーの広田だ。
その時間帯は全社員が社内にいる状態で、もちろん他の部下もいた。
僕を含め、部下たちは聞こえないフリをして黙々と作業をしている。
部下の前で恥さらしにあっている彼に対し、聞こえないフリをするのは最大限の思いやりだった。


僕はIT系のベンチャー企業に勤めていた。
残業も多く、給料も決して高くは無いが、楽しい職場で、大きな問題は無く、過ごしていた。
ポジションはWEBディレクターといって、WEBサイトの構築・運営をするのが主な業務だ。
広田はチームリーダーという肩書きはあるが、実質はWEBディレクターだ。

広田と僕は普段から非常に仲が良く、一緒に昼食を食べに行ってはふざけた話をして盛り上がっていた。
彼は僕より2つ上だったが、タメ口でしゃべるほど仲が良かった。
しかし、仕事ぶり・人柄共に、実に尊敬しており、一人で処理しきれるとは思えないほどの仕事をこなし、
帰宅時間は毎日11時過ぎ。それ以外は徹夜という過酷な中、見事業務を回していた。
彼は友達でもあり、良き先輩でもあった。

そんな彼が、新規営業で取ってきたクライアントへ提出するスケジュールを提出し忘れてしまったのだ。

『お前ふざけんなよ!』

甲高い関西訛りの怒号を浴びせる彼はGM(ジェネラルマネージャー)の岩井だ。
うちの会社にはGMが2人いる。地位ランクでいうと3番目で、社長、取締役、GM、の順で権力を持っているが、
社長と取締役は何もしないので実質GMが全権力を握っていることになる。
社員が20名しかいないのに2人もGMがいるのはおかしな話だが、彼は新規営業を取ってきて、WEBディレクターに仕事を落とすのが仕事だ。
要は営業だ。

彼は仕事外では、営業の人間だけあって話も面白く、中々楽しい人なのだが、ひとたび仕事になると自分中心の事しか考えられなくなり、周りの人は頭を抱えていた。
当然社員全員から嫌われていたが、本人は気づいていないだろう。

リーダーの広田が大勢の部下の前で恥を掻かされている。
岩井は僕も嫌いだったので、怒りが込み上げ、Skypeで同僚と話そうと思った。
Skypeとはチャットのようなもので、第3者を招待しない限りは外部の人間に公開することなく、
1対1でチャットが出来るサービスが含まれているアプリケーションである。

『これだけ大勢の部下の前であそこまで言える神経が分からない』

この1文を打ち、送信した。
この時、僕は本当に怒っていた。
元々嫌いだった岩井が、仲の良い広田を恥さらしにしている。
自分はいい加減な仕事の振り方してるくせに!
と、完全に冷静を失っていた。

『送信』ボタンをクリックした時に事を成し終えたせいか、少し冷静になった。
あて先を確認したら、なんとその岩井に送ってしまっていた!

『まずい!』と思い、色々考えたが、先ほど打った文面ではどんな言い訳も出来ない。
気づかないフリをしても意味が無い、直接言って謝るしか無い、と思い、リーダーへの叱責が終わった後、
すぐに駆け寄り、

『すみません。先ほど岩井さんに大変失礼な内容のメッセージを送ってしまいました。』
『あぁ?なんやねん・・・』

そういいつつPCの操作をはじめ、Skypeを開く。
そうすると表情を変え、周りの人に聞こえる様に大きな声でその文面を読みあげあじめる。

『これだけ大勢の部下の前であそこまで言える神経が分からない~~?なんやねんコレ』

周りに何をアピールしたかったのかは不明だが、先ほどの叱責の雰囲気の後だったので、
誰の耳にも入っていなかったようだ。

『す、すいません。広田さんがちょっとかわいそうだったんでつい・・・』
『何やねんコレ、書いてることも頭悪いし。もええわ、どっか行け!』

あれ、意外と怒らないな、と思い、『失礼します、すみませんでした』と一礼し、席に戻る。
やっぱ素直に謝るのが一番なんだな。
ふぅ、とため息をつき、作業に戻り、数十分後、1通のメールが届く。
メールを開封すると、自分の目を疑った。

岩井が社内マネージャーのML宛てに、何と先ほどの僕が書いた一文を貼り付けし、

『僕こんなん言われてます。これはさすがにヘコみますんで相談させてください。なんだったら僕この会社辞めてもいいですよ。みなさん好きなようにやってください。』

という内容のメールを送っていたのだ。
MLというのは、あるメールアドレスに送ると、あらかじめ登録しておいたメールアドレス全員に配布されるシステムの事をいう。
つまり、マネージャー陣である、社長、取締、GM2人、広田に対してバラまいたのだ。
僕にはそのMLにCcをつけていたようだ。

『こいつ・・・どこまで性格悪いんだ・・・』

この岩井、仕事の仕方からして性格が悪いとは思っていたが、ここまでとは思わなかった。
最後の1文、
『なんだったら僕この会社辞めてもいいですよ』
この一文ですぐに狙いが分かった。

『・・・俺をクビにする気だ・・・』

GMで営業という立場の彼と、平のWEBディレクターの僕。
天秤にかけるような文面を打つことにより、クビにするかどうかの問題に持っていった。

その1時間後、別のGM、勝田に呼ばれ、会議室へ。
さんざん言われた挙句の果て・・・

『社内の風紀を乱したとして解雇』

そう言い放たれ、案件の引継ぎ期間3ヶ月を経て僕はその会社を解雇された。

(続く)