僕は頭の回転が鈍い。日常生活に支障のない程度の、表面的な反応は別として、目の前で起きていることをリアルタイムに処理できないので、日々の出来事はほとんど理解されないまま素通りしていく。その中で印象的な出来事だけが頭に残り、後でそれを反芻していろいろなことを感じたり、理解したりする。その間隔は、実際の体験の数時間後だったり、数日後だったり、長いときは自分でも思い出せないほど年月が経っていたりする。


 いつの出来事だか分らない記憶が、ふいに鮮明に甦って、その時感じたであろう感動や印象が、実際にそれを体験していた時よりもリアルに再生され、その体験の意味を理解する。その現象は夢と現実を区別せず、何年も前に見た夢の中のひとコマが突然甦ることもある。その瞬間まで、見たという意識もなかったような夢の記憶が甦るのだが、不思議なことに、僕にはそれが夢の中の体験なのか、現実に体験したことなのかがはっきりと区別できる。意識とは、心とは不思議なものだ。時空の法則を無視した何かがそこにある。