理想と明日は似ている。原理は同じと言ってもいいかもしれない。共に、幻想であることと、決して手にすることができないという点で同じである。明日はどう転んでも今日にはなれないし、理想はどう転んでも現実にはならない。

 理想は実現したと同時に現実になる。実現した途端に、理想としての輝きと魅力を失い、追い求める必要のない現実になるのだ。明日への希望は、今日という現実の訪れと共に失われる。

 今日という現実、今というリアリティに、希望や理想の入り込む余地はない。希望や理想のないところに、絶望はない。では、理想も希望もない人生に何の意味があるというのか?味気ない現実をいつまでも噛み締めながら死を待つだけなのか?

 理想も希望もない生き方がどういうものなのかは、そのように生きてみなければわからないだろう。ただ、理想や希望を持たない人生を歩むには、恐ろしく透徹した精神が求められるはずだ。あるいは、透徹した精神には、理想や希望は必要ないと言うほうが正確かもしれない。