孤高の狼といふ者の旅日記

孤高の狼といふ者の旅日記

自身3度目のブログ。昔気質な性格故に、雲の流れの様に身を任せる事が中々できないのがもどかしくも、そんな己が心身の鍛錬と共に、思う事、起こった事を淡々と綴る。全てを捨てた漢の流離いの先にある心の美醜とは!?

この地に滞在できるのも、あと三日。


トゲによる痛みなどは可愛いもので、身体全体の張りや凝りが歩みを重くさせつつある。だが、北日本に寒波が押し寄せ、この地にも霜がおりつつあるとなれば、柚子の収穫作業に待ったなし。


***

昨日、今日と柚子の収穫手伝いをしてきた農家さんは、ご夫婦でなんと千本の柚子の木を管理しておられるという。※この地では、60歳までなら実に600本ものの柚子の木を管理できるそう。


でも、そんなご夫婦も80代近く、現実的には全ての柚子の実を収穫する事はできないであろう。

(時は霜がおりかけつつあるというのに…。勿体ない)

だが、わたしはそういう方々にこそ、自らの全身全霊でもってお助けしたい。


そんな意図を伝統薬味「山うに」の会社の社長に伝えると「ぜひ手伝ってあげてください」と快諾された。


こんな私の拙い手伝い、且つ限られた時間での収穫は大した量にはならない(ちなみに、今年は実を沢山つけているからか、多くても一日で5本分しか収穫できない)。


だが、そのご夫婦は収穫量の多少ではなく、何よりもわたしの心意気を喜んでくださり、初日から休憩のお誘い等、温かく迎えてくださったもの。


一方、わたしはその高齢の農家さんの生い立ちやこの厳しい環境の田舎に身を置いておられる理由や思いなどをお伺いする等、交流を深めたいのは山々なのだが、それ以上にタワワに実った柚子を一つでも多く収穫し、その農家さんに貢献したいという思いが強い。


それ故に、憩いのお誘いについては、丁重にお断りした。


その後、黙々と柚子の棘を身体に浴びつつ収穫していた訳だが、あの気さくで明るいおばあちゃんの顔が脳裏から離れない…。


故に、帰宅後、その農家さん宛に手紙をしたためた。


内容は凡そ「わたしが休憩の誘いを断ってしまい申し訳ない。今回はお手伝い可能な期間が短いので、作業に専念することで代えることお許しください。また来年2、3月にも来ますので、その時はゆっくりお茶をいたしましょう」といったようなもの。



すると、二日目の作業終了時には、厳格な顔つきのおじいさん自らがジェスチャーを交えて、わたしに語りかけてくださった。


実のところ、そのご主人と初めてお会いした時に、わたしは並みならぬ眼光の鋭さが第一印象として残っていた。


これ程の田舎において、しかもこれ程に多くの柚子のお世話をしてこられた方ともあらば、その労苦は並大抵のものではない。あの顔つきは、自らが己が心と対峙してきたからこそであろうと。


しかも、高齢の方とあらば、その心の奥に触れるのは、なかなかにて難しいであろうと感じたものである。


でも、わたしは自分の行動で己が心を誠実に示すのみ。


そんな姿勢を見ていてくださったのか…!?


そのおじいさんの表情からは険しさが消え、寧ろこの風来坊を頼りにしてくださった。


そんなおじいさんが語ってくださった言葉に「わたしは剣道をやっていた。君も何かをやってたのか?」というのがあった。


その一言で、この我が身の拙い文武の才が活きたことを痛感すると同時に、武の道における精神(武士道)の共鳴を感じたもの。


剣の道を長らく進んでおられたなら、自ずと初見で相手を色んな視点から洞察する力に長ける。


ここでいえば、正に見知らぬ地から来た者への注視というのが正しいか!?


その目に適わぬような者では在りたくなしとは、己が挟持だが、それを身を以って「これ(これまで自問自答してきた歩み)で良かったのだ」と思えたのは、何にも勝る収穫であろうか。


以降は、わたしがこの地を後にする日までのお手伝いの場所も「危険ではない所をやりなさい。危ない所はワシがやる」等と、若輩者には勿体ないお計らいをみせてくださったもの。


そんな姿勢を見せられると…


漢として、是が非でもこのおじいさん以上の姿勢でもって応えたくなる。


正に、肉を切らせて骨を断つならぬ「肉を(柚子のトゲに)刺させて実を採る」ことに邁進ですね。


思えば、この方の歳(84歳)は滋賀の親父と然程変わらない。


でも、その両者の表情や身なり、姿勢は全く違う。それこそ、、もしくはのようだと言いい切っても過言ではない程だ。


だが、その両者に通ずるのは、心の温もり


そして、奇しくも、わたし自身を俯瞰すると、案外、その両者の長所を習得しようとしているのだと思ったもの。


この地滞在の終盤に思わぬご縁に恵まれたこの幸甚…、誰に語らんや!?


父なる天を仰ぎ、ついぞこの言葉を発してしまう。


「あのおじいさん然り、気さくなおばあちゃんとお茶の一服を嗜む日の訪れが待ち遠しい」と。


しかし、今宵は行きつけの食堂で、顔なじみとなってしまったおばあちゃんから「(この子は)可愛いし、優しいのよ。持ち帰りたいな」と他のご友人に紹介されるといった事も😅


そんなこんなで、この田舎でも旋風をおこしてしまったような氣が。


生きるって、面白いものですね!


*この地の朝は霧に覆われている。9時くらいでないと、晴れなのか曇りなのかさえ分からない程。


*冬の風物詩とも言える霜や朝露で可視化できる蜘蛛の巣。


*拳大のサイズの柚子が未だ沢山あります。


*今回は多くの農家さんの所でお手伝いしたが、そのお礼にと柚子をいただく😋これは築地本願寺副宗務長(椀de縁の居候2号)に送りますかね!


*石垣が多い光景は田舎ならでは。拙者はこんな風景が何よりも落ち着く。9時からになると、ようやく霧も晴れ、今日の天気が分かる。