こんにちは。

パフォーマンスデベロッパーの

Re-Viveです。

 

前回、

背骨と運動

の記事において、

背骨の運動が大事な理由として、

「運動の起源にしてつなぎ役、そしてバランス構造」

だから、とお伝えしました。

で、背骨が運動の始まりになる、

というお話を進化の順を追ってみると、

運動の始まりは背骨にあり、

それらが手足に波及していくことがわかる、

ということを述べました。

 

運動の始まり、はなんとなくわかった。

では、

「つなぎ役」とは一体どういうことなのか。

これについて今回は多少の持論を交えてお伝えします。

 

まず、下の図をみてください。

自動車の4輪駆動の仕組みを模式的に表したものです。

エンジンで生じた動力が中央車軸にある

「センターデフ」に伝わり、

前輪、後輪に伝わるイメージです。

 

なんとなくこの時点で背骨と運動の関係がイメージできるかもしれませんが、

背骨で起きた運動は手足に繋がります。

 

(Masharawi 2004より引用)

 

この図は、240体の屍体から

3次元的に計算された椎間関節面の横断面の角度を模式化したものです。

一目見てわかるのは、

胸椎の椎間関節面はより体の左右を結ぶ面に近く、

腰椎の椎間関節面はより体の前後を結ぶ面に近い

ということでしょう。

胸椎では、側屈・回旋という運動がしやすい状況にあり、

腰椎では前屈・後屈という運動がしやすい、

というのは一般的に知られていることだと思います。

ただ、これを、

胸椎の運動は側屈回旋、腰椎は伸展屈曲、

という一つの側面からだけ見てしまうのはもったいないと思います。

脊柱は、

上から下まで一つ一つの椎体が連なって構成されており、

元を正せば、魚のように上から下まで(または下から上まで)

運動は繋がるように作られている。

 

(犬塚2004より引用)

 

犬塚は、脊柱運動の特徴を椎間関節面の向きから述べています(上図)。

両生類のオウサンショウウオや、爬虫類のトカゲやヘビは、

首尾一貫して関節面は水平方向、

従って、生じる運動は側方波動運動。

哺乳類の腰椎椎間関節面は矢状面(体を前後に貫く面)を向いており、

体幹運動は背腹運動になる。

胸椎の水平位は両性爬虫類以降一貫して水平位のまま。

下方型哺乳類に比べると、

ヒトの腰椎はゆるく、頭方からみると関節面はL字型で、

前後屈、側屈、回旋を許す構造になっていると述べています。

 

多くの書籍で、腰椎の関節面は側屈回旋に適さないことが言われているが、

四足獣に比べると、一つ一つの椎間関節面がある程度の運動を許している

ことが伺える。

(佐々木2006より引用 c:ブタ d:イヌ e:ネコ f:ウサギの腰椎)

 

ヒトの背骨は、

進化の最終形に来て、

「より3次元的な運動を可能にしている」

ことがわかります。

 

Masharawiの図に引用したように、

側屈・回旋の運動を縦方向の運動に変える転換点は、

胸椎の11-12番とされています。

 

ちなみに、、頸を構成する筋肉が

下方に伸びてきて作られることになった

横隔膜(三木2013)は上位腰椎にくっついていて

股関節をまたいで下肢を脊椎に結びつける

大腰筋の起始部の最高位が胸椎12番であることは、

構造的に意味のあることだと思います。

脱線した。。イメージしやすいように、

先程の4輪駆動のモデルをいじりました。

ヒトは直立して前方へ進む動物で、

頭が向いている方向へ進んでいくのが合理的です。

この時、方向を変えていくにはまず、

頭が行きたい方向を向いていき、

その運動に引かれるように上半身が回旋していきます。

陸上のカーブ走などイメージしていただくとわかりやすいかもしれません。

下の図は、福島選手のカーブ走の瞬間を切り取った写真ですが、

目が行きたい方向を見据え、

頭部の安定とそれを可能にする上半身の回旋、

そして後方へ地面を蹴り出す下肢の動きがリンクしています。

 

上半身が回旋しながらも、

下肢は後方へまっすぐ地面を蹴り出す。

この動きには、もちろん股関節の回旋が関与しますが、

背骨による運動の調整が大きく関与していると思います。

頭部の運動により方向付けがなされ、

胸郭は回旋の動きから下部体幹、股関節に力を伝え、

その動きが下肢を前後に動かす力源ともなっている。

 

下肢から上肢への運動の繋がりもまた然りです。

スポーツ動作の中では、

この動きの繋がりを原則としてパフォーマンスが構成されています。

 

地面を蹴った力を上肢に伝えるリンクで大きな役割を果たすのは、

やはり股関節だと思いますが、

股関節というのは、

「伸展・内旋」が

closed pack positionといって、

最も関節が安定する位置になります。

上図の写真に示すように、

伸展・内旋方向へ運動が生じることで、

その上の骨盤(寛骨)が前傾方向へ引かれ、

仙骨が対側へ傾斜して腰椎に運動が繋がります。

 

このような動きの連動により、

上肢へ一定の規則性を持った運動が波及します(下写真)。

 

下半身で生じた力は背骨を介して腕・頭に伝わるし、

肩より上で生じた力も、背骨を介して下肢につながる。

規則性を持ったこの繋がりは、

ヒトが進化の過程で身につけてきた3次元的な動きの中でこそ、

最も働きを大きくするのだと思います。

 

背骨を動かす能力、

下肢・上肢からの動きの流れを切らずに伝える能力を引き出すために、

Re-Viveでは、Spine waveというワークを行っています。

練習すればだれでもできます(^ ^)

是非お試しを。

 

次回は「バランス構造」としての背骨、

のお話をいたします。

最後までお読みいただきありがとうございました!

 

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参考・引用文献

・Masharawi Y, Rothschild B, et al. Facet Orientation in the Thoracolumbar Spine. (Phila Pa 1976). 2004 Aug 15;29(16):1755-63.

・犬塚則久.脊柱と椎骨の形態学.2014 Spine Surgery. 28(3):239-245.

・佐々木基樹.ホネのかたちー哺乳類の骨格 脊柱ー.2006 THE BONE 20(3): 355-369.

・三木成夫.生命とリズム.2013.河出文庫