僕らの始まりは
僕らが生まれた頃からではなくて
僕らが生まれる前から
その親がいるのであって
その親にも親がいるのであって
そうたどっていくとアウストラロピテクスとか
地球が生まれたその時に辿り着くわけではない
僕らに継がれる話はせいぜい200年弱
4代前くらいの話じゃないかなぁ
たいてい
その1代目2代目ってのは立派に人生をまっとうした先祖だったりする
3代目もなんとか踏ん張って自らの人生を投げ打って先祖が積み上げてきたものを守り抜こうとする
そして4代目あたりから限界がくる
そこからの末裔は誰かがどこかで奮起しないと
その先の末裔が栄えることはない
僕は今
一族の問題に直面している
一族がその家を畳む時がきた
ただし
これは僕の代の問題ではなく
僕の父の代での問題だ
父には兄と弟
そして妹がいる
そのうち弟はすでに癌でなくなってしまった
妹は
まぁ普通の話だがすでに嫁に出ている
そうなると父の兄と父でどうにかしなければならないのだが
正直
父には一族を畳むという
そんな大きな話ができるほど
まともな人間ではない
ただ
一族にとても迷惑をかけている
それはいたしかたのないことだが
今
一族をたたむ時に長男がいるからといって
自分は知らないとは
筋から言えばそんな話はできない
そもそも今問題になってることは
その時の迷惑から来ていることだ
だから
今ここで家は知らないとは本当なら言えないのだ
だが
そういったことに無頓着な父は
知らないを通そうとした
だから僕は
少々父に厳しいことを言った
昔の話ではあるが
それはなくならない事実で
いたしかたないことだが
その責務と十字架は負うべきだ
と
そして財力もなく
話すことが苦手な父にとって
さらに酷なことを言った
「父の弟が生きていれば」
と
父の弟は
大会社の副社長でその人生を終えた
その器は三男でありながら
常に一本の正義感があり
当然実家の最終的な始末のことも考えていたことを
僕は知っている
だからその話を父にした
さすがに少しこたえたようで
怒ることもできず
責務を全うできない自分の無力さを痛感した
そんな顔をして
顔を伏せてじっと考え込むようにしてた
そして
考えることをやめ
ふて寝した
結局
逃げてばかりの人生だった父には
とてもこの一族の始末を
自らの過去の始末をつけれる
度量は持ち合わせていなかったのだ
そうなると
僕は
そんなどうしようもない父が果たせない
責務をどうにかしようと考える
ただ
今の僕にも正直どうにかできる財力もなければ
時間もない
今の僕がやるべきは
あと5年の中で自分を確立することに全神経を集中し
そのことだけを考え
そのことだけに時間を注がなければならない
だからとても一族の最期に首を突っ込む余裕がない
でもどうにかしないといけない使命感はある
だから
5年は待って欲しいと
父の兄に話をしようか考えている
父の兄には息子がいたがある日突如
思いもしない形でこの世を去った
40歳であった
僕が慕っていた親戚の兄ちゃんだった
人に対する思いやりや優しさを
その人から僕は教えてもらった
大好きな親戚の兄ちゃんだった
その兄ちゃんが死んでしまったから
父の兄
おじちゃんの意思を継ぐことできる人はいない
意思の強いおじちゃんだから
自分だけでどうにかしないといけないと
1人で抱え込んでいるに違いなかった
親戚の兄ちゃんがいれば
きっと
俺がどうにかすると
そういっていたに違いない
頑固で責任感の強いおじちゃんだから
「お前には関係のないことだ!」
「いいかお前は自分の家族を守ることだけ考えろ」
「このこと俺がなんとかするから」
と突き放すに違いない
だけど
そういってくれる人がいるだけでも
この問題を理解してくれる人がいると
わかっただけでも心の負担は
少しは軽くなるはずだ
どうしようもない体たらくな父
責任感の強いおじちゃん
死んでしまった父の弟
死んでしまった親戚の兄ちゃん
僕は
そういった全ての人の意思を考え行動したい
今は何もできないとしても
今できることをしたい
そしてやっぱりこの5年で自分のことは
かたをつけなくてはならない
一族が継ぐのは負うのは
一族の栄光だけでなく
どうしようもない父の負の責任と
一族の終焉と
そして再起のための布石を
継がなければ
負わなければならないのだとわかった