今日は、直接レースに関係ない部分のハナシを。

 

オートレースを始めとする、いわゆる「公営競技」は、戦後の地方財政に寄与する事と、もう1つ目的があった。

 

それは、「戦災未亡人の救済」である。

 

一家の主が太平洋戦争で亡くなられた家庭は、当然の事ながら未亡人である奥方が家計を支えなければいけない。

で、その未亡人の働き口を「投票所の券売業務」という事で確保したのである。

 

なので、投票所で働く人は、ほとんどが女性である。

 

しかし、当然の事ながら戦後から何十年も経ってくると、戦災未亡人だけでなく、普通に主婦がパート感覚で働くといった状況になる。

 

また、実は、給与が格段にイイため、自分がレース場にいた頃は、非常に人気のある仕事でもあった。

 

彼女達は、基本的には、開催ごとに雇用されるのだが、それもほぼ形式だけ。

実際は、一度採用されれば、継続雇用されるのと同じであった。

 

そして、今でこそほとんど全自動で車券や馬券、船券が売られているが、当時は、殆どが手売り。

なので、売上も良かったことから、かなりの数の「従事員」がレース場にはいた。

 

そんな彼女達には、「従事員組合」があって、それがまた異様に強い団体であり、レース場にもかなりの影響力を持っていたのであった。

 

その組合の委員長として、ほぼ「女帝」と言っても過言ではないくらいの人物がいたのであった(笑)

 

新規の従事員に採用されるように委員長が口利きをしており、それが1回ウン十万だったというウワサも流れていたくらいである(笑)

 

また、従事員達は、レース場に来るのに毛皮の服を着てくるなという内規的なモノもあったらしい。

 

なけなしの金を持って勝負しに来る人間からすると、いかにも金持ちといった身なりの従事員達には、大変よろしくない感情を抱きかねないというのがその理由であったと聞く。

 

 

自分がレース場に異動になった当時、新しいスタンドを建設していた。

 

が、しかし、従事員組合に主催者が一切ハナシを通していなかった事から、建設中も「マンションでも作ってるの?」などと皮肉を言われたりし、オープンの目標としていたSG開催時にも、完成しているにも関わらず、組合の了解が得られないという事で、使われなかったりもした(笑)

 

自分のいた施設会社は、当然主催者である行政がお客さんであり、要望は、かなり聞かざるを得なかったのだが、本来主催者の下であるハズの従事員組合が、本来以上の力を持ってしまったために、むしろ主催者よりも上に位置しているかのような捻じれた状況となっていたのである。

 

主催者は、結局は「役人」であり、どんなに長くても5年程度で異動する。

 

しかし、従事員は、それこそウン十年も勤めているような猛者揃いである。

 

どちらがレース場の事を知り尽くし、交渉上手だったかは、火を見るよりも明らかだったという事である。

 

なので、スタンドの件以外でも「組合→主催者→施設会社」という流れで、結構理不尽な事もやらされたりしたモノである。

 

また、選手宿舎には、開催中缶詰めになる選手の食事をまかなうための食堂があったのだが、当時請け負っていた業者がかなり不評だったのだが、気が付いたら委員長の倅の飲食店がちゃっかり交代して請け負っていたりもした(笑)

 

 

たぶん車券を買っているお客からしてみたら、穴場(投票所)のBBAが、そんなに金があって力もあるとは夢にも思わないであろう。

 

まあ、従事員は、お客からの暴言やら罵詈雑言を常に浴びなければならないという、ある意味ギャンブル場で最も過酷な負担を背負っていたのも事実ではあるが。

 

とにもかくにも、今でこそ機械化と経費削減によって数が減った従事員であるが(そもそも完全機械化にも「人減らしになる」という事から反対で、発券業務が楽になる「人が操作する」機械にしろという理不尽な要求もあった…)、昭和から平成に変わって間もなくの当時は、そんな状況だったのである。

 

 

あと、レース場の売店やレストランは、施設会社が業者に委託していたというのは前に書いた通りだが、それらについても時代的にかなり牧歌的でおおらかだった。

 

売れる店は「売上歩率家賃」、売れない店は「固定家賃」と書いたのだが、前者についての施設会社と業者の攻防も結構オモシロかった。

 

当時は、いや、今でもあまり変わっていないが、ギャンブル場の売店における会計は、ほとんどがレジも通さず現金でやりとりされる。

 

従って何がいくつ売れたか?なんていう記録もなく、後で現金を数えて売上額を計上するといった手法が取られていた。

 

という事は、ぶっちゃけ言えば、売上なんてどうにでもごまかせるのである(笑)

 

今年ハリウッド映画で「ローガン・ラッキー」という犯罪モノがあった。

 

何かとアンラッキーなローガン兄弟がカーレース場での一大イベント時に売店の売り上げを盗むというハナシなのだが、ネタバレで書いてしまうと、結局のところ、売店の正確な売上をレース場はリアルタイムで把握出来ないため(停電でレジを使えなくもしていたが)、盗難にあった金額もはっきりは分からず、結局盗まれたであろう額よりもかなりフカして保険会社に盗難保険金として請求し(盗んだ側もそういう事態を見越して、盗んだ全額に見せかけたある程度の金を路上に放置した)、結局誰も損しない(強いて言えば保険会社だけ損)という犯罪を描いていたのだが、当時のレース場がまさにその世界。

 

売上歩率で家賃を払う業者からすれば、売上を過少申告しておけば、当然家賃もその分安く済む。

 

なので、当然の事ながらごまかそうとしてくる。

 

それに対し、管理する側は、例えば飲み物のカップなどを支給し、その消費量で売上を推測したりした。

 

また、レジを管理する人間含め店員を施設会社が雇って派遣し、監視係も兼ねさせて売上金額をごまかさないようにしていた。

 

しかし、そうやって派遣された店員も店側に籠絡されたり(笑)

 

なんとも微笑ましい?攻防が繰り広げられていたのである(笑)

 

まあ、お客が激減した今では、もうそんな事はやっていないのだろうが(固定家賃でなければ請ける業者がいないであろう)。

 

 

しかし、売上がイイ時代は、その業者から入社したばかりの自分でもお中元、お歳暮を山ほど貰ったり、接待なんかも良く受けたなぁ。

 

そういう部分だけでも当時に戻りたいモンだなぁ(笑)

 

つづく。