田舎の友人から電話があり、幼小中と同級生だったH君が亡くなったことを知らされた。どうやら鬱病を患った挙句、自ら命を絶ってしまったらしい。高校進学後は疎遠になってしまっていたため、彼が家庭を持っていたのかどうかはわからない。


勉強は中の上、スポーツは中の下という平凡な子供で、同じようなボクにとっては馬が合う友人の一人だった。わりと傷つきやすい性格も似ていた。プロレスが好きで、そういえばドリー・ファンクJrとの記念写真を自慢げに見せられたことがあった。保護のためティッシュにくるまれた写真には、190㎝にも及ぶ大男の横で無垢な笑みを湛える少年。さほどプロレスには興味のないボクだったが、ティッシュから丁寧に取り出す仕草や、子供目にも子供っぽく映るその笑顔に、彼だけの特別な世界であることを感じ取った。その絵柄は今でも鮮明に記憶している。きっと羨ましかったのだろう。


大学に進学した後、彼がオートバイにも乗りはじめたことを噂に聞いた。友人の間では、最もオートバイに縁の無さそうな二人(ボクと彼)が乗っていると、からかわれ笑われたことを思い出す。彼はどんな車種にどんな想いで乗り始めたのだろうか。恐らくボクと同じで青臭いセンチメンタリズムがあったのでは。

しかし今となっては知る由もない。まずはご冥福をお祈りする。