計画を始めるにあたり注意したことは、大学に落ちたばかりとはいえ

この俺は優等生。  この事件のことを俺の計算によるものと

ばれるわけにはいかない。 俺は表だって顔を見られないように、

注意していた。

 

  そこで知り合いのTを歯車として使うことにした。

 もちろんTは自分がそんなことに加担しているなんて、微塵も思っていない。

偽善行為をしてると思っているだけである。

 

 なに、簡単な仕返しのはずだった。

当日、俺は毎朝8時にバスにのるやつ、ここではHとしておこう。

Hがバスに乗れないように仕組んだ。

そうTを使ったのである。 

7時50分頃話があるとTを呼び出し、うわべだけ話しを合わせながら、

時計が58分になった頃あいをみて、Tが目をそむけていた瞬間、

自分のかばんから持ってきた学生証を取り出した。

 そして、Tに言った。

「今、たぶんあそこの人だと思うんだけどこれ落としたみたいなんだ。

 ちょっとお前、渡してきてくれないか。 ちょっと俺これから用事

 あるの忘れてて急いでるんだ。 じゃあ頼んだぞ。」

 秀人は、その場から離れ次の準備をしながら様子を窺(うかが)っていた。

  見事、計画がはまりHはバスを逃して、ただぼーぜんと混乱していた。

 なぜ彼が混乱したかって?学生証はどこで手に入れたかって?

 

そう俺が作った偽物だったからさ。 俺はモトカノにプライドをけずる思いで、

やつの写メを頼みこみ、入手し、大学など情報を聞き、

得意のパソコンで偽造した。知り合いの加工印刷所にまで手を借り、

作りあげた。 本物の学生証っぽくできていて、Hも持っていたからこそ

恐ろしさに固まっていたのだろう。

 狙いはどんぴしゃりだった。

 次の準備をしていた俺はやつが徒歩で駅まで急ぐことを見越して

(自転車がないため)、落とし穴を事前に掘っていた。

そこに誘導するため、道路工事標識を使い、誘い込もうとしていた。

すると、思わぬ方向にHが歩きだした。

「くそ、せっかく作った落とし穴が。。。。さすがに二度はひっかからないか。」

あきらめた、その時だった。

急にHの姿が消えたのだった。一瞬何が起こったかわからなかった。

 

 Hの消えた先を捜しまわること数分、ついに理由が判明した。

ある女性の悲鳴が聞こえたのだ。

誰かが血だらけの重傷らしい。

のぞきこむとHが運ばれていくところだった。

 

俺が、運んだ道路工事の標識の置いてあった元の位置には、

工事中の穴があった。

 そこに落下していたのだ。俺が他で使うため、工事中の看板を

運ぶことで、元あった位置になく、気付かずに落ちたという結末だった。

 俺は、自分のしたこととの偶然と怖さで変な笑いを押し殺していた。

俺の用意した落とし穴は平凡なものだった。

せいぜい、落ちても擦り傷や汚れ、ずぶぬれになる程度のものだった。

それを、あいつ自分でもっと大事故に遭(あ)いやがった。

まさに天罰だな。人の彼女をとり、さげすんだ罰だ。

どうやら悪の神様もいるらしい。この前の不思議な声を思い出した。

その事件は、単なる事故として処理され、

もちろん俺がその場にいたことは、誰も知らない。

事故時に近くに落ちていた、偽造学生証もその時に回収することができた。

俺はついている。憑いている。

 大学に落ちたのも今の自分に目覚めるために必然だったのかもしれない。

 

 

 こうして秀人の悪意を持って人を陥れる悪の天罰計画第一弾は幕を閉じた。

このあと秀人は、大学でのシナリオを考え浪人時代をすごす。

自分のシナリオ通りに他人がひっかかり、

苦しむことに快楽をみいだしたのである。

折れ曲がり、屈折した優等生の悪の心はここに開花し、

善から悪へと堕ちていくのであった。

 

 

 次は、いよいよ現在の秀人に戻り、大学生活編がスタートします。

彼はいったいどうなってしまうのでしょう、立ち直ることはあるのでしょうか。

でも、立ち直る、善とは何でしょう。

報われないお人よしにあなたはなりたいと思いますか?

こんな悪に憑かれた(疲れた)私も早い終焉を臨んでおります。

                        悪鬼 秀才でした。