<超常現象?TOBIRA>
こわごわとしながらもついに俺はその女性駅員のもとまでやってきた。
あの・・・。すっすいません。
女性を見ると<のっぺらぼう>ということはなく、
普通のもの静かそうな駅員の女性に見えた。
はい?どうかされました?
僕の知り合いが急にいなくなってしまって、よくわからないのですが、
さっき僕の友人と話をしてましたよね?
ん?お話? 色んな人と今日も話してるけど、そんな君くらいのことしゃべったかなぁ?
だって、さっきこのメモ見せてスケッチしてたじゃないですか?
メ?・・・・メ?
モ?・・・・・
急に駅員の女性がメモをみせた途端、機械仕掛けの人形のように
不思議な動きをしたかと思うと、
さっきまでと違う声でしゃべりはじめた。
お前が探しているのはこの男か?
スケッチブックを取り出すとみるみるうちに
絵を描き始めた。
そこにいたのはまさに俺の友人だった。
そうか、これだったのか。
友人が青ざめていたのはこのためだったのだ。
どう起こっているのかこの世のものかもわからない現象。
失踪中の捜索人を描きだしていたのであった。
こいつのもとにいきたいか?
女性のものとも思えない天の声をさっきの女性駅員はしゃべっている。
こいつのもとにいきたいかだと?
友人を返してくれ。
しかし、それきり女はだまったままであった。
すると、上に向けて指さしたかと思うと、
オーロラのような帯状の道が天まで現れた。
あの女はこいつのもとにいきたいかといっただけだ。
返すとは一言もいっていないのだ。
そう、戻れるかどうかはわからない賭けである。
死神のような先導者が現れ、
階段の先で待っている。
お前はこの先へ行きたいのか?
正直、俺は恐怖で震えていた。
友人は助けたい。
だが、命がかかっていることは直感でわかっていた。
もうこの世には戻れないかもしれない。
やっぱりやめることってできるかな? ハハっ。
思わずそうしゃべっていた。
だが、心が叫んでいた。
本当にお前はそれでいいのか?
もう友人を助けることは叶わないかもしれないんだぞと。
やっぱ俺をその先へ連れて行ってくれ。
一生後悔を抱えたまま生きていくくらいなら
このまま帰ってこられなくても自分の信じた信念を貫こう。
俺は死を覚悟した。
するとさっきまでの恐怖が幾分やわらぎ温かい光に包まれた。
入った世界を見て、俺は驚愕せざるを得なかった。
そう、昨日見た夢の光景がそこには広がっていたのである。
その道を夢の記憶を頼りに歩きだす。