第一章 日本崩壊

2050年ついに日本の人口の9割以上が悪の心を認めた。

この歴史的事実は、日本の戦争放棄の終焉をも意味していた。

悪を肯定する世界。

 悪を取り締まる警察は、あまりの犯罪者の増加と事件に屈服させられ、

逆に犯罪者のイベントのターゲットとされた。

 その世界の始まりは、ある一通のネットの公開文書から始まった。

「世界の皆さん、人間の本質は悪である。思うように行動せよ。偽善には鉄槌を!」

                          皇帝 ルシフェル

怪文書がツイッターで流れだしたのは、2020年のことであった。

懸命に生きれば、将来のお金がためられた年功序列から実力主義に変わり約30年。

人々のストレス、就職難による就業難民の数は増え、年金生活の破綻。

将来の不安から犯罪件数が激増する中、ついに人々を解放するという悪の組織

神聖大日本帝国が世界に意志表明をはじめたのである。

 信じられるのは自分だけ、頭を使いいかにずるがしこく生きるかが某先生の言葉でも

表されていた。 悪を肯定するのは今でしょ!

 冗談めいていたはずの流行語も 銀行の貸していたお金の踏み倒し、株価の暴落により

日本そして世界の経済はすでに限界を迎え、 現実味を帯びていった。

 今まで当たり前だと感じていた最低限の生活の破綻、国の補助金も底をつき、

自給自足、そして自分の手でなんとかして毎日を生きる食料を調達しなければいけなかった。 薬、売春、過剰労働、ついには物価の暴落により貨幣制度まで破綻し、

物を手に入れることさえ困難になった。

 当然、支払いも滞り当たり前となっていた携帯端末、

通信手段も制限され、国民は何を信じていいのかわからなくなっていった。

 そんな時、神聖大日本帝国を旗あげした皇帝ルシフェルと名乗る男の檄文は、

国民に衝撃を与え、少なからず影響を及ぼしていくのである。

 なければ奪っていい。まわりも同じ。力と悪が支配する世界。

 ただし、皆がその男に取り込まれていくことには、理由があった。

不安定な世界、生活の中で日本も終わりを迎えたかに見えたが、

その悪の組織は、団体行動、規律が統一をされ、生活が保証されると共に

ルールもあり、日本を軍備増強して他国との交渉を強くする理念さえあったのである。

  そんな新しい新政府軍を名乗る男に活路を見出し、自分を見失う人々が増えて

 何がおかしいことであろうか。 

 ルシフェルは、すでに日本だけでなく、世界を見据えていたのである。

悪を肯定し政府打倒をすることは、戦争放棄から80年近くたった2020年にあって、

ついに軍備増強の絶好の口実を作ることになるのである。

 さらには、彼には、サイバープロフェッショナル部隊の養成による世界と対等に交渉するための武器と手段をすでに獲得しつつあるのであった。

次の章では、ルシフェルの活動理念、そして組織たちあげにいたる彼の胸中を

さぐっていこうと思う。

 果たして2050年日本人の大半に認識された悪の組織は日本の救世主なのであろうか。

日本は、そして世界は、悪に屈してしまうのか。

 第二章も乞うご期待ください。