保育園の頃から知り合いのS君という人がいる。特別仲が良いというわけでもなかったのだが、
毎年今頃の季節になるとうまい蜜柑を送ってくれる。それはもう20年くらい前頃から続いている。返礼として、つまらないものを贈るからなのか義務的なものなのかわからないが、私としても、一山超えた隣近所で、幼馴染のよしみと懐かしさから、つい甘えてきてしまった。
今年は雨が少なく,実がしまり格別甘みがある。彼も、もう私と同じく70歳を超えて、蜜柑を箱詰めをする労力を考えると、そろそろ草臥れてきているかもしれない。
彼の家は海辺から少し離れた大きな家で、私の家のような開墾農家ではなく、昔からの地主なのだろう。田圃もあり米も自給でき、すぐ近くにある海に子船を浮かべれば魚も獲れる。割合平地なところが多く、私の家のある保水できない急斜面の石ころだらけの過酷な立地条件ではない。それだけでも恵まれた家の子だ。理数系だし、頭もよい。
ところが、子供のころから偏屈なところがあり、それは言わんでもいいだろう、という物言いの多い人で、それで損をしている。地域の実力者で人の面倒見も悪くはないが、その性格は死ぬまで引きずるのだろう。あれさえなければいい男なのだが、でも、私のような小人に比べれば大きな人なのかもしれないかとも思う、今日この頃。