●祈り

 

彼は祈っていた。

駅へと降りる階段の上で。

 

彼は祈っていた。

大きな体躯を折り曲げ

地面に敷いた小さな布に

額を擦り付けるようにして。

 

祈りが終わり

小さな布を畳んで

傍に置いてあったリュックにしまうと

 

初めからずっと

そうしていたかのように

階段の上に座っていた。

 

 

海外からの旅行者なのか

この近くに住んでいるのかは

わからない。

 

きっと彼は

どこにいても

何をしていても

 

定められた時刻になると

定められた方角に向かって

 

その大きな体躯を折り曲げて

地面に額を擦り付けるようにして

一心に祈りを捧げているのだろう。

 

 

日常の中で

決まった時間に

特定の対象に向かって

祈りを捧げる習慣のない私が

祈りについて考えるなんて

 

おこがましい氣持ちになった時

ガイドさんはこう言った。

 

 

日常の全てが祈りです

 

あなたの一挙手一頭足は

あなたが神に捧げる祈りであり

あなた自身の意宣です

 

それはまた

あなたを通して行われる

神の御技でもあります

 

 

 

 

そうだそうだ

そうだった。

 

心なしか

背筋がピンと伸びた

買い物からの帰り道。

 

 

YouTube始めました。チャンネル登録お待ちしています♪↓