エイジレスの362回 強迫性障害に関連する遺伝子

 

 

 近年の遺伝学の飛躍的な進歩により、数多くの病気が遺伝的要因によるものであることがわかったきました。

 

 今回のお話も、そんなお話の一つです。

 

 強迫性障害(OCD:Obsessive Compulsive Disorderの略)とは、自分の意思に反して、不合理な考えやイメージが頭に繰り返し浮かんできて、それを振り払おうと同じ行動を繰り返してしまう病気です。

 

 症状としては、抑えようとしても抑えられない強迫観念と、それによる不安を打ち消すために無意味な行為を繰り返す強迫行為があります。

 

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<バリアントとは>

 同一種の生物集団の中に見られる遺伝子型の違い。

 

 同一種であっても個体によってさまざまな遺伝的変異が存在し、その変異の総体をバリアント(多様体)とよぶ。

 

 遺伝子バリアント。遺伝的バリアント。遺伝子多様体。遺伝的多様体。

 

 

 

<論文要旨>

 強迫性障害OCDは、非常に遺伝性の高い神経精神疾患で、脳裏に侵入してくる思考、そして、時間を浪費する反復行動を特徴とする。

 

 OCD患者は世界中で8000万人を超えており、大部分の患者の症状は現在利用可能な治療法で緩和することができない。

 

 これまでにヒト、マウス、イヌを対象とした研究が行われて、OCDに関係している可能性のある複数のバリアントが明らかになっているが、ヒトについては具体的な遺伝子とバリアントの検証は行われていない。

 今回、Huyn Ji Nohたちの研究グループは、608個の候補遺伝子の塩基配列データの解析を行って、ヒトの症例でOCDと強く関連する4個の遺伝子を見いだした。

 

 これらの遺伝子は、OCDに関連する神経経路(セロトニンとグルタミン酸のシグナル伝達経路とシナプス接続の経路など)で作用し、こうした経路が治療標的となる可能性が示唆されている。

 

 今回の研究で得られた知見は、強迫行動の生物学的基盤に関する新たな手掛かりをもたらしている。

 

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 強迫性障害に関する遺伝子4つのうち、一つでも、突然変異があると、強迫性障害を発生するようです。

 

 が、お薬などで症状が出ないようなところまで改善できるようですので、早く、気づいて対処するのが良いようです。

 

 

 

 以下のような行動が、自分や周りの方に見られる場合は、すぐに受診されることをお勧めします。

 

(※結構、当てはまりそうなことがありますが、異常なレベルでなければ良いようです。が、一番下の巻き込み型は要注意です。)

 

 

●強迫観念と強迫行為の具体例


手洗い◆汚染に関するもの
 

 電車のつり革につかまったりトイレに行ったりしたあとなどに、バイ菌などに汚染されたのではないかという不安が生まれます。

 

 さらにいろいろなものに接触することによって汚染が広がっていくと感じるようになり、何度も手を洗ったり、何時間もお風呂に入ったりしてしまいます。


◆安全確認に関するもの


 家を出るときドアに鍵をかけたか、あるいはストーブの火を消し忘れていないかなどと不安になり、何度も家に戻って戸締まりや火の元を確認します。

 

 自分の行為が完全だったかどうか絶えず疑いを持ち、何度も確かめないと気がすまなくなります。


◆他傷行為への疑念に関するもの
 

 車の運転中にタイヤが何かを踏んだりすると、人をひいたのではないかという不安に襲われ、その場所に戻って車を降り、誰かをひいていないかどうかを確認します。

 

 その他にも、自分の行為が誤って人を傷つけてはいないかという不安にさいなまれます。



◆順序や数字などに関するもの


 衣服を着るときなどに、必ず決められた順序で行わなくてはいけないと考えます。

 

 順番を間違うと最初からやり直してしまい、1つの行為に長時間を費やします。
 

 特定の数字を不吉と感じ、あらゆる行為の際にその数字を避けようとします。左右対称でないといけないといった、ものの配置などに強くこだわるケースもあります。


◆その他


 要らなくなったものでも、いつかまた使うのではないかという思い込みから捨てられず、家の中が不要なもので埋め尽くされることもあります。
 

 症状が悪化すると、家族などにも徹底した掃除を強要したり、戸締まりなどを自分で確認するだけでは安心できず、何度も確認させたりするなど、身近な人を巻き込んでしまうこともあります(「巻き込み型」といいます)。