エイジレスの236回 人工の蜘蛛の糸を作る
合成スパイダーシルク(蜘蛛の糸)は、鉄より5倍強く、芳香族ポリアミド系樹脂(化学繊維)より3倍丈夫です。
しかも、合成繊維のような、しなやかさを持っています。
なので、スパイダーシルクは、用途が多彩な「生分解性材料」として有望なのですが、これまで天然のものと同じ特性を持つ人工品を製造することは難しかったようです。
因みに、生分解性材料とは、「微生物によって完全に消費され自然的副産物(炭酸ガス、メタン、水、バイオマスなど)のみを生じるもの」とされています。
つまり、ゴミとして、捨てられたとしても、自然界で、分解されるため、プラスチックみたいな問題は発生しません。
で、今回の論文は、スパイダーシルクを大量生産できるかもしれない技術のお話です。
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スパイダーシルクは、タンパク質分子が長くつながった鎖によって作られている。
シルクの生成に用いられるタンパク質は、絹糸腺内で極めて高濃度の溶液の形で貯留されている。
クモは、糸を出すとき、細い管からそのタンパク質溶液を分泌する。
この管沿いに酸性度が変化して圧力が上昇することにより、タンパク質分子は連結され、シルク繊維を形成する鎖になる。
クモが糸を作る方法にヒントを得たJan Johansson、Anna Risingたちは、クモの絹糸腺内でシルクのタンパク質(シルクプロテイン)が遭遇する細い管および酸性度変化を模倣した製糸装置を考案した。
特殊なタンパク質(2種類の天然シルクプロテインのハイブリッドであり、高度に濃縮された形で製造することができる)にこの装置を用いると、強度および弾性が他の人工シルクを上回る人工スパイダーシルクが得られた。
その強度は天然のスパイダーシルクとほぼ同等であった。
研究チームによれば、この方法で製造される生分解性シルクは、天然のスパイダーシルクと比較して安価で入手しやすく、高性能の繊維素材や高度な医療装置などに応用されるシルクの大量生産が見込まれるという。
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昨今は、テロとか、通り魔的な犯罪に巻き込まれる危険性が増えています。
そんな時、鉄の5倍も強い繊維でできている服を着ていると、少し安心です。靴や帽子まで作ってしまえば、かなり安全性が高くなります。
ということで、普通の人にも恩恵がありそうな技術ですので、実用化が待たれるところです。