エイジレスの214回 隣の細胞の幹細胞化を抑制する

 

 

 植物というのは、動物に比べて、非常に再生能力が高いのですが、その理由は、幹細胞にあります。

 

 幹細胞というのは、細胞の元となる細胞で、動物の場合は、ES細胞みたいに、どんな臓器にでも変化する細胞のことです。

 

 但し、動物の場合は、幹細胞に限りがあって、体全体の細胞から見ると、極めてレアな存在です。

 

 ところが、植物の場合は、生命の危機など非常事態を感知すると、一見、普通の細胞が、幹細胞化します。

 

 従って、多肉植物などは、根や茎が切られても、葉っぱだけになっても、再生することができます。

 

 今回は、植物の幹細胞化の仕組みについてのお話です。

 

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 学際科学実験センター遺伝子研究施設の西山智明助教は,名古屋大学および基礎生物学研究所と共同で,

 

 コケ植物ヒメツリガネゴケの分化した葉から1つの細胞だけを取り出して培養すると,その細胞が90%以上の高頻度で直接幹細胞化し,植物個体を作り直す飛び抜けた再生能力があることを見いだしました。

 その一方で,隣り合う2つの細胞を取り出して培養した場合には,2つの細胞のうち,片方の細胞だけが幹細胞化することが多く,両方の細胞が再生する頻度は低いことも分かりました。

 

 これは,先に幹細胞化した細胞が隣の細胞の幹細胞化を抑制していることを示しています。

 今後,幹細胞化を抑制するシグナル物質の実体が明らかになることで,植物の通常の発生過程における幹細胞の機能の解明につながることが期待されます。

 

 また,幹細胞化の抑制を解明することは,多細胞体制進化の理解につながると期待されます。

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 今回は、コケの葉っぱについて、その細胞の9割が幹細胞化すること、細胞が複数あると、一つだけが、幹細胞化することがわかったとのことです。

 

 園芸の世界では、既に、コピー細胞による均一、大量栽培の技術に応用されていますが、研究が進むと、食料となる植物にも適用されるようになるかもしれません。

 

 世間的には、地味な研究ですが、地球温暖化が進んだ将来の食料生産技術などへ応用できるようになるかもしれませんので、温かい目で、見守ってください。