エイジレスの221回 沿岸部における洪水の発生頻度が倍増する恐れ
地球温暖化の影響は、様々な形で現れますが、海面上昇も、その一つです。
南太平洋にあるキリバス共和国周辺の海面は過去20年間、毎年数ミリずつ上昇し、水没の危機が叫ばれています。
首都タラワ周辺では2055年までに最大30センチ近く上昇すると予測され、世界銀行はタラワのある島の5~8割が50年までに浸水する恐れがあると警告しています。
「キリバスが水没したら、フィジーが全キリバス人の移住を受け入れる」
2月11日、フィジーのナイラティカウ大統領は、キリバス政府に対してこう表明しました。
キリバスはすでにフィジーに広大な農地を購入し、塩害でキリバスが耕作不能になる事態に備えています。
海面上昇により、国家消滅の危機が叫ばれているのはキリバスだけではありません。おなじく南太平洋のツバル、インド洋のモルディブもそうです。
ツバルは、9のサンゴ礁の島からなり、平均海抜は2メートル(最大5メートル)。人口1万人の国です。この国では海面上昇や地盤沈下などによって、洪水や海水の浸水、塩害などすでに発生しています。
モルディブは国土の80%が海抜わずか1.5メートルで、1000以上の島がありますが、ほぼすべての島の海岸が浸食されているといいます。
1990年のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)が出した報告書では、
「過去100年間に全球平均地上気温は0.3~0.6度、海面は10~20センチ上昇し、特段の対策がとられない場合、21世紀末までに全球平均地上気温は約1~3度の上昇し、全球平均海面水位は65センチ(最大1メートル)の上昇が予測される」
としていましたが、その予測の最大値で海面上昇は進んでいることになります。
今回の論文は、海面上昇による影響の最新論文です。
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Vitousekたちは、極値理論(大規模事象の発生確率または再来周期を定量化するための統計的手法)を用い、海水準の予測と波・潮汐・高潮のモデルを組み合わせて、沿岸部における洪水の増加を推定した。
2030~2050年に海水準が今より5~10 cm上昇することが大部分の予測で示されているが、それによって世界の多くの地域で洪水事象の発生頻度が倍増することが今回明らかになった。
Vitousekたちは、5 cmの海水準上昇によって著しい影響を受けると考えられる都市としてムンバイ、コーチ、グランデヴィトーリア、アビジャンを挙げ、10 cm未満の海水準上昇によって、インド洋、南大西洋と熱帯太平洋のかなりの部分で洪水のリスクが倍増するという考えを示している。
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水は、温度が高いほど膨張しますし、水蒸気(雲)もたくさん発生します。
なので、熱帯地域が、先に影響を受けるようです。
しかし、地球は一つなので、熱帯地域の変化は、当然のことながら、地球全体に波及します。
それが、どのような形で現れるかは、現時点では、予測の範囲にすぎませんが、おそらく、熱帯地方でこれから起こることが、日本でも起こることは考えられます。
ということで、沿岸地域は、なるべく避けて暮らした方がいいかもしれません。
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