174回 寄生植物は、宿主を太らせる!敵か味方か?

 

 

 植物は一般的に、太陽光を浴びて光合成をすることで成長に必要な栄養を作り出しますが、そうではない植物もいます。

 

 それは、ほかの植物に寄生し栄養を奪い取って生きる寄生植物です。

 

 寄生生物を描いた映画「寄生獣」は、人間の頭部を乗っ取り、他の人間を捕食する新種の寄生生物「パラサイト」が出現した現代日本を舞台に、脳への乗っ取りを免れた主人公がパラサイトと共生し、他の人間に対して正体を隠しながらもパラサイトとの戦いに巻き込まれていくみたいなストーリーでした。

 

 一般的に、寄生する生物は、宿主に危害を加え、宿主を乗っ取り、最悪、宿主さえ殺してしまいます。(宿主が死ぬと、寄生している側も死ぬので、はっきり言って、やりすぎとは、思うのですが・・)

 

 今回の論文も宿主に危害を加える系の植物ですが、必ずしも、悪いことだけではないというお話です。

 

 因みに、似たような関係に、「共生」というのがありますが、共生は、Win-Winの関係なので、平和な関係ですが、寄生は、侵略であり、平和とは言えない関係です。

 

では、論文をどうぞ(難しいので、飛ばし読みでもいいです)

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 根寄生植物は根に「吸器」と呼ばれる侵入器官を形成し、宿主植物の根に侵入します。

 

 そして、栄養の通り道である「維管束」とつながることで宿主植物から栄養を奪い取ります。

 

 また、栄養が宿主植物から寄生植物へと移動すると同時に、タンパク質やRNA(遺伝子の元)などの物質が寄生植物から宿主植物へと移動することが知られていました。

 

 しかし、その仕組みや物質の役割はよく分かっていませんでした。

 

 今回、理研を中心とする国際共同研究グループは、寄生された宿主植物の維管束組織が肥大し太くなることに着目しました。

 

 維管束組織の成長は、植物ホルモンの「サイトカイニン」によって促進されます。

 

 そこで、根寄生植物のコシオガマと宿主植物としてシロイヌナズナを用い、サイトカイニン応答について研究を進めました。

 

 その結果、

 

①寄生植物の根の吸器で生合成されたサイトカイニンが組織のつながりを通して宿主植物の根へと運ばれ、宿主植物のサイトカイニン受容体を介してサイトカイニン応答を誘導し、その結果宿主植物の維管束組織の肥大が引き起こされること、

 

②寄生植物にとって維管束組織を肥大させることが栄養を奪い取る効率を高めていることが分かりました。

 

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 つまり、

 

1.寄生植物は、宿主の栄養を運ぶ管を太くすることで、栄養を得やすくしようとする。

 

2.宿主の栄養を運ぶ管を太くするために、寄生生物は、植物ホルモンを宿主に注入する。

 

ということです。

 

 寄生植物にとっては、栄養をたくさん搾取できるので、よくできた仕組みですが、寄生される側にとっても、栄養を全体に供給するための管が太くなるので、必ずしも、悪いことではないような感じです。

 

 問題は、多分、この後です。

 

 栄養を沢山得られるようになった寄生植物側が、大きくなりすぎて、宿主側の植物を枯らせたりすると、結果的に、共倒れになってしまいます。

 

 人間社会においても、パラサイトシングルという言葉があります。

 

 「学卒後も、なお親と同居し、基礎的生活条件を親に依存している未婚者を言う」のですが、あまり、大きくなりすぎると、親ともども倒れてしまうかもしれないので、寄生を共生に切り替えた方が良さそうな気がします。