167回 腎臓(じんぞう)の健康にも関与している腸内フローラ
腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう:腸内フローラ)とは
ヒトの腸管内には 100 兆個にもおよぶと見積もられている腸内細菌が生息しています。
この腸内細菌の集団(腸内フローラ)が宿主(ヒト)の消化機能では分解できない食物繊維などを嫌気発酵により代謝し、様々な代謝物質に作り替える働きをしています。
これらの腸内フローラ由来の代謝物質は短鎖脂肪酸のような健康に有益な代謝物質もあれば、尿毒素のような悪影響を与えるものもあります。
一般には、腸内フローラのいい所が強調されたお話が多いのですが、健康ではない方にとっては、悪影響がある場合があるため、コントロールが必要ですというお話です。
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(前略)
このように腸内細菌がいない無菌の腎不全マウスでは腎臓病の進展や心血管障害の悪化に影響する尿毒素類が減少していましたが、意外にも、無菌マウスは腸内細菌叢を有する通常マウスよりも腎機能障害が悪化しやすいことが分かりました。
このことは、腸内細菌叢は尿毒素産生という腎臓病にとって負の面のみならず、何らかの腎保護的な正の役割をも果たしていることを示唆する結果です。
本研究では、腸内細菌叢は腎不全状態においても腸管内での短鎖脂肪酸産生やアミノ酸代謝に大きな影響を及ぼしていることが明らかになりました。
短鎖脂肪酸やアミノ酸は免疫制御や栄養シグナルを介して腎保護的な役割を担っていることが近年報告されており、腸内細菌叢は免疫や栄養面から腎保護的な役割を果たしていることが考えられます(図 3)。
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腸内フローラにより、尿毒素を産生するため、腎臓病の方にとっては、悪化するのでは?と考えられていたのですが、実際には、腸内フローラのない(尿毒素のない)マウスの方が、腎臓が悪化したということです。
つまり、腎臓にとっては、腸内フローラのマイナスの働きよりも、プラスの働きの方が、大きかったということです。
ということで、腎臓に問題のある方にとっては、差し当たり、お墨付きが出たということですので、食物繊維とか、ヨーグルトとか、ラフィノースなんかも気にせずに食べてよろしいかと思います。
因みに、ラフィノースは、オリゴ糖の一種で、オリゴ糖の中で、唯一、腸内細菌のエサとなるオリゴ糖です。(それ以外のオリゴ糖はエサになりません・・)キャベツ、ブロッコリー、アスパラガスなど植物に広く含まれています。
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