166回 昆虫の”逃げるは恥”ではない行動

 

 

 2016年10月にTBS系でテレビドラマ化され、注目を集めた『逃げるは恥だが役に立つ』の題名がぴったりな昆虫のお話です。

 

 「オオツノ コクヌスト モドキ」という昆虫のオスがは、他のオスとの戦いに負けた後、4日間は他のオスと出会っても戦わず、逃げ続けるということです。

 

 コクヌストモドキは、体長約4.5mmで、赤褐色のゴミムシダマシ科の甲虫で、小麦、シリアル、パスタ、ビスケット、豆、ナッツ等の貯蔵された食物に損傷を与える、いわゆる、害虫です。

 

 面白いのは、オスは脚でメスの身体をたたくことで求愛するのだとか。

 メスをたたく回数が多ければ多いほどプロポーズに成功するという特徴を持っているらしいです。

 

 今回、新たに分かった生態が、「逃げ恥」的な行動ということです。

 

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 オオツノコクヌストモドキのこうした現象について、「個別ベースモデル」と呼ばれるシミュレーションを行って、動物の行動様式の進化の観点から、数理モデルで解析しました。


 ここで考えるのは、4 日間逃げ続けるという行動が、他の行動(例えば、逃げない、1日間逃げる、2 日間逃げるなど) と比較して、より多くの子孫を残せるかどうか(有利であるかどうか)という事です。

 

 有利であれば、長い時間の経過後に、集団は「4 日間逃げ
る」個体で占められる事になります。


 個別ベースモデルは各個体の状態を考慮するシミュレーションです。

 

 ①負けた記憶があるか、

 ②もしあるのなら何日前に負けたか、

 ③いままでの闘争によるダメージの蓄積具合

などの状態を考慮。

 

 コンピュータ内で、仮想的に 201 個体の昆虫を設定し、ランダムに抽出した個体を戦わせ、負けた個体はある期間逃げ続ける等というシミュレーションを実行しました。ある意味、ロールプレイングゲームに似ているシミュレーションです。


 本シミュレーションの結果、集団内で一日にオス同士が出会う回数が 60〜100 回という条件下では 4 日間逃げつづけるという行動が、他と比べて有利である事が分かりました。

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 虫のことなので、考えて行動しているわけではないかと思いますが、本能的に、逃げることが、結果的に、子孫を増やすために有利であることが、わかっていたということです。

 

 しかし、何故、逃げ続ける期間が4日間なのかは、明らかになっていません。

 

 わかったから、どうという事ではありませんが、少し気になります。

 

 この研究の方法が、何の役に立つかというと、「進化ダイナミクスの様々な研究に応用される事など」が期待されるとのことですが、よくわかりません。

 

 因みに、この虫、メスをたたいて求愛しますが、ヒトで真似すると、逮捕されかねませんので、真似するなら、「逃げ恥」だけにしておいて方がよろしいかと思います。