157回 クラゲで関節の悩み解消?変形性関節症治療への可能性
高齢化社会が進行するにつれて、関節に悩みを抱えている人が多くなっています。
特に、老化などによって、骨と骨をつなぐ位置に存在する関節液の成分が変化して、関節がこすれあったり、ぶつかったりすることによって痛む「変形性関節症」の患者は、わが国ではすでに700万人に及ぶと言われています。(※米国は2100万人)
で、クラゲから採取した新規のムチン型糖タンパク質(ムチン)である「クニウムチン」というのが、動物実験で、効果を上げたというお話です。
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関節液は、その粘性によって関節をしっかり支えるとともに、その流動性や潤滑性によって、骨と骨の間の摩擦を軽減する役割を果たしています。
中でも関節液に含まれるヒアルロン酸は、肌の潤い成分としても知られていますが、関節液中では、主に粘度を保って関節を支える働きをしていると考えられています。
体内では、絶えず細胞がヒアルロン酸を作り出すとともに、新陳代謝による分解も進み、1週間でおよそ30%が失われるとされています。
加齢や疾病で細胞の生産能力が低下したり、代謝による分解に生産が追いつかなくなると、正常なヒアルロン酸に不足が生じ、関節液のバランスが崩れ、関節としての機能を果たせなくなって変形性関節症を発症する、というメカニズムが、モデルの1つとされています。
(中略)
4つのグループのうち、ヒアルロン酸単独グループでは従来から報告されている関節の修復効果が見られ、クニウムチン単独ではほとんど効果が見られませんでした。
しかし、ヒアルロン酸とクニウムチンを等量混合した場合には、ヒアルロン酸単独の場合を大きく上回って関節の修復が進むことを、定量的に見いだしました。
つまり、クニウムチンの添加により、1+1で2以上の効果、すなわち、ヒアルロン酸の効果をさらに強める働きを見いだしました。
また同時に、クニウムチン注入による感染症や、強い免疫反応などの悪影響がないことも確認できました。
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関節の異常の原因の一つに、ヒアルロン酸を体内で生合成する能力の衰えがあって、加齢とともに、進むことがわかっていましたが、ヒアルロン酸を注入するだけでは、症状が改善しないことが問題だったようです。
で、今回、クラゲから、抽出した「クニウムチン」と、「ヒアルロン酸」を一緒に注入すると、目覚ましい効果があったということです。
クラゲさんは、迷惑なぐらいたくさんいるので、漁師さんにとっても、いいお話かもしれません。
但し、例によって、実用化には、長い年月がかかりますので、今すぐに効果を知りたい方は、食べ物から摂取されては如何でしょうか?
<ムチンを含む食べ物>
オクラ、モロヘイヤ、レンコン、里芋、山芋、長芋
アシタバ、納豆、なめこ、うなぎ、ドジョウ
燕の巣、つるむらさき、エチゼンクラゲ
因みに、ムチンは、熱に弱いです。糖タンパクなので、70℃以上になると、変質します。
なので、生で食べるか、軽くゆがく程度で食べるのがお勧めです。
<ヒアルロン酸を含む食べ物>
鶏の軟骨、鶏手羽、トサカ、豚足、鮭やカレイ、魚の目、フカヒレ、うなぎ、
野菜では、山芋、オクラ、納豆、もずくなどのねばねば系
ということで、ねばねば系の山芋、オクラ、納豆には、両方含まれるので、関節痛でお悩みの方は、毎日、食べられると、効果があるかもしれません。
因みに、ヒアルロン酸は、ムコ多糖類の一種で、分子がとても巨大で、コラーゲンの10倍以上あるため、そのままの形で、吸収されることはありませんが、体内で、生合成する際の材料になる可能性はあります。
どうしてもという方は、低分子ヒアルロン酸って名前のサプリメントがありますので、併用されるのもよろしいかと思います。
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