エイジレスの151回 肥満マウスの健康増進と長寿に役立つ合成化合物
肥満であると、慢性炎症が促進され、「Sirt1」のような長寿に関連する遺伝子の発現が抑制されて、老化過程が加速する可能性があると考えられています。
そこで、発明されたのが、健康増進と長寿に役立つ合成化合物ということなのですが、まずは、「Sirt1」の説明からです。
Sirt1とは、長寿遺伝子として注目されている遺伝子の一つで、7 種類のサーチュイン(Sirtuin)ファミリーが存在し,Sirt1 から Sirt7 まで同定されています。
それぞれ 7 種類の酵素活性や細胞内の局在,また N,C 末端の配列により分類されており,最も酵母 Sir2 と構造や機能が類似しているものとして Sirt1 に注目が集まっています。
サーチュイン遺伝子が活性化すると、若返って、病気も治って、元気になるという夢のようなお話があって、NMN(ニコチンアミド・モノ・ヌクレオチド)という物質が、7種類、全てのサーチュイン遺伝子を活性化するという事で、その筋の方々から、脚光を浴びました。
その後、臨床研究が続けられているようですが、結果は、まだ出てきていません。
因みに、NMNは、ビタミンB3の仲間なので、キャベツやブロッコリーなどのアブラナ科の植物に、そこそこ含まれています。
(※若返りをお急ぎの方は、たくさん食べてください)
で、今回、ご紹介するのが、「Sirt1」を活性化させる合成化合物です。
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今回、R de Caboたちは、成体マウスに高脂肪食を与えて、SRT1720を与えたところ、平均寿命も、最高寿命も延びた。
また、SRT1720を80週間以上与えられたマウスにおいては、粗食のマウスの遺伝子発現プロフィールに似た遺伝子発現プロファイルが見られ、代謝、インスリン感受性、肝臓とすい臓の機能の改善といった健康上の効用が確認された。
SRT1720が、Sirt1遺伝子を直接的に活性化させるかどうかについては今でも論争が続いている。
de Caboたちは、今回の研究で判明した寿命と健康に対する影響が、SRT1720によるSirt1遺伝子の直接的あるいは間接的な活性化によるものなのかどうかは断定できなかった。
それでも、今回の研究は、肥満マウスにSRT1720を長期投与すると、寿命が延びて、健康状態が改善されたことを確かに示している。
こうした知見を臨床応用して、ヒトの寿命と健康増進に役立てるまでには、さらなる研究が必要だ。
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「SRT1720」という物質を作って、ねずみで試したら、寿命が延びて、健康状態が改善したということです。
今回も、例によって、ねずみさんのお話なのですが、一つの可能性として、人工的に「長生きの薬」が作り出せると、安くて大量に出回ることとなるので、人類に対する影響は、極めて大きいものがあります。
この分野は、一発当てると、巨万の富が得られそうなので、研究者の方も、必死で頑張っておられると思います。
楽しみに、長生きしてください。
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