第106回 虫垂が、腸内フローラをコントロール!虫垂炎でも取らないほうが・・・
かつては、虫垂炎になると、手っ取り早く取ってしまうのが、一般的な治療法でした。それぐらい、役に立たない臓器として、認識されてきたのですが、ここ数年の腸内フローラの研究によって、実は・・・みたいな話がありますので、ご紹介します。
腸内フローラとは
ご存じの方も多いかと思いますが、人の腸内には、およそ100種類、100兆個もの細菌が住んでいまして、消化を手伝ったり、人にとって必要な成分(ビタミン、酵素など)を生産していたり、免疫の手助け(70%を担当しているので、主役かも)なんかをしています。
つまり、腸内フローラのコントロールがうまくいっていないと、間違いなく、美容や健康、エイジングレスにも影響がでてきます。
虫垂とは
虫垂は、痕跡器官といって、生物の進化に伴って、その機能が必要でなくなった器官の一つと考えられています。
親知らず(歯)や男性の乳首などは、痕跡器官として、特に有名です。
虫垂は、盲腸の先っぽにある長さ60~80mmほどの器官で、「腸の扁桃腺」とも言われていて、リンパ球が密集していて(リンパ小節)、良く腫れることがあるため、簡単に切られ続けた過去があります・・
虫垂の復権
半ば、ゴミ扱いされてきた虫垂ですが、近年の研究により、大きな役割があったこととがわかってきました。
腸内フローラ(細菌叢(そう))が担っている仕事の一つに免疫システムがありますが、そのシステムのコントロールをしているのが、「IgA抗体」なのですが、虫垂は、この「IgA抗体」を産出しています。
IgA抗体のお仕事
・分泌型IgAは、腸管に存在する抗原と結合・排除します。
・腸管に限定されている食物ペプチド、細菌、ウイルス、原生動物と真菌などの過剰な体内吸収を防ぎます。
・IgA抗体は体の粘膜組織に存在し、消化管の小腸粘膜だけでなく、唾液、涙、呼吸器の気道にも存在し“免疫排除”の役割を担っています。
つまり、「IgA抗体」がないと、細菌やウイルスにやられやすい体になってしまうということです。
虫垂は、この大事な「IgA抗体」を作ってくれているわけですの、実は、とっても大切な器官だったというわけです。
虫垂を手術でとってしまった皆様、ご愁傷様です・・・
と、いっても大丈夫です。
虫垂が担当しているのは、大腸における腸内フローラのコントロールでして、小腸は、小腸の近くにあるパイエル板というところが、担当しています。
しかも、虫垂がなくなると、盲腸をはじめ、周りの器官が、虫垂と同じ役割を持つようになることがわかっていますので、虫垂を切除してすぐは、色々と問題が起こったとしても、しばらくすると、問題なく生活できるようになるとのことです。
とは言え、やっぱり、ないよりは、あった方が良さそうですし、今後の研究により、さらなる機能も見つかるかもしれませんので、虫垂炎になられた際には、薬で、炎症を抑えるのがよろしいかと思います。
お大事に!