第90回 細胞のエネルギー源「ATP」で、お魚がおいしくなる
 
 
 ATP(アデノシン三リン酸)は、細胞にとって唯一のエネルギー源で、糖と酸素を原料として、細胞内のミトコンドリアというところで、作られています。
 
 加齢とともに、ATPの生産が減ってきて、老化が進むことがわかっていまして、リターンエイジングを目指す方には、非常に重要な物質です。
 
 そんなATPですが、お魚の場合は、ちょっと違った働きがあるということです。
 
 うま味成分として、グルタミン酸やイノシン酸などがあり、合わせだしは、 グルタミン酸ナトリウム 90%、イノシン酸ナトリウム 10%が、一番いい割合だと言われています。
 
 で、ATPは、細胞にエネルギーを渡すというお仕事が終わった後、生きた細胞ではAMPという物質まで分解され、再びエネルギー補給を受けて、ATPに戻るというサイクルを繰り返しています。
 
 ところが、死んだ細胞では、AMPからATPへとは戻らず、AMPからイノシン酸(IMP)に分解されます。
 
 つまり、お魚が死ぬと、ご臨終の際に残っていたATPやAMPが、うまみ成分であるイノシン酸に代わるため、結果的に、お魚がおいしくなるということです。
 
 なので、鯛やヒラメなどの白身のお魚は、2~3日ほど熟成させると、おいしくなると言われてますが、正確には、熟成しているわけではなくて、ATPやAMPが分解して、イノシン酸に変化していたということです。
 
 で、分解が、さらに進むと腐敗が始まり、イノシン酸がヒポキサンチンという物質に変わります。ヒポキサンチンは、おいしくないので、あまり長くおいておかない方がいいと思います。
 
 また、青魚の場合は、身に血液が多く残っているため、イノシン酸ができる前に、腐敗が始まって臭みがでたり、食感が悪くなったりしますし、そもそも、雑菌が繁殖するなど、安全上の問題もありますので、新鮮なうちに、食べたほうが無難かと思います。
 
 因みに、牛肉の熟成肉は、酵素や酵母菌などによりタンパク質が分解して、アミノ酸などに変化しますので、今回のお話とは、メカニズムが違います。お間違えの無いように・・
 
 
女子力低下が気になる方に!