日常 チャック | tellvesper

日常 チャック

エスカレーターに乗る

右にずれてあがろうともしたが、それほど必要に迫られていないのでやめた。

目の前に少しファーのついたショートブーツにショートパンツをはいた小柄なかわいい女の子がいる

髪は長く背負っているリュックにつくか、つかないかの位置にある

と、ここまではよかったのだ。

何がよくないかというとだ。つまり問題が発生したのである。


彼女のリュックには一つ横にのびるチャックがついていた

それを彼女はしめようと左手で試みているのだが、なかなかしまらない

私から丸見えのリュックとその行為、丸見えというより20センチ未満の距離だ。


だから私にはわかる。閉まらない原因はあきらかだ。


彼女がしめようと試みた時にリュックにシワができる。

なので、弛みを生じさせずにピンとはった状態でチャックをしめようとすれば、簡単にしまるはずだ


そうだ右手をつかえばいい


そうじゃない、左手で何度やっても無駄だ、現にさっきから4センチぐらいしか閉めれてないじゃないか。


右手をつかうんだ、さあ!なに、携帯だと。そんなことよりチャックを今すぐ閉めるんだ


ああ、もどかしい。いっそ手伝い。

軽くリュックを伸ばしてあげればい。それなら彼女にもあやしがられずに事はすむ。

よし、やってやる。

これも何かの運命だ。私がやるべきなのだ。

彼女のチャックを閉めるタイミングにあわせてリュックを少し右にひっぱってやればいい。


・・よし、今だ!!

さっ



・・・リュック固!!!


これは相当な力で引っ張らないと無理だ。しかしそんなことをしたら彼女にへんな目でみられるだろう


もうなすすべはなかった


結局エスカレーターがのぼりきる間中彼女は何度もチャックを閉めようと試みたが、結果丁度半分閉まったところでエスカレーターは終わり、彼女は試みるのもやめた。

その時のリュックからは確かな哀愁が漂っていたが、

私の心にもよくわからない哀愁が濁っていた。





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