寺島実郎氏は、経済・地政学・文明史について長年に渡って深く考え、そして発信する知識人かと思います。
寺島氏がご自身のチンヤネルで、6月21日に放送した動画を視聴しました。
「イラン戦争の歴史的意味と日本政治の危うさ/今月はオランダの月」(寺島実郎の世界を知る力#69/2026年6月21日放送) - YouTube
彼が主張する「日本が外交の姿」は
アメリカ追随から脱し、
アジアの現実を直視し、
平和主義と多国間協調を戦略として掲げ、
世界秩序に対する主体的な構想を示す。
ことではないかと推測しています。
以下に、彼が語っていた、①東南アジア諸国連合(アセアン)のメンバー国の意識の変化、②イラン戦争の歴史的意味、③日本が国際社会ですべきこと、を整理します。
アセアン加盟国の意識
1. レグセス米国防長官がアセアンに来訪
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シャングリラ会合で米国が存在感を示そうとした。
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しかし アセアン側の反応は冷ややかで、地域の空気は以前と変わってきている。
2. アセアンの「色分け」が急速に進行 ← ISEAS(シンガポールのシンクタンク)の調査
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「2026年に米中どちらにつくか」という質問で、 インドネシア・マレーシア・タイ・シンガポール など「アセアン5」が 中国寄りに傾きつつある という結果が出た。
現実の動き
・インドネシアはBRICS加盟
・マレーシアも加盟申請
・米国に拍手をしているのは フィリピンと日本だけ。
つまり、アセアンの中心国が急速に「米国離れ」 を起こしている。
3. シャングリラ会合での日本と中国と関係
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小泉防衛相(高市氏を指す文脈かと思われるが、動画の文脈に依存)が 中国から「新型軍国主義」と批判されている。
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台湾海峡発言などで 日中関係はギクシャク。
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「日本は核も戦略爆撃機も持っていないのに“軍国主義”とはおかしい」 → 皮肉を込めた反論。
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中国の軍事専門家が 「では日本の過去のアジア侵略をどう考えるのか」 と質問した。
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小泉氏は 回答を「避けた/無視した 」とされる。
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「核を持っていない=軍国主義ではない」という話ではない。
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ここで寺島氏が提示したのは “パラドックス”。
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日本人の一般的認識: → 日米安保で日本を守るため
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しかし米中間の議論では → “日本軍国主義を封じ込めるためのビンの蓋” という論理が常に背景にある。
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5万6千人前後が常時駐留
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世界の在外米軍の 1/3以上を日本が受け入れ
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経費の 7割を日本が負担(ホストネーションサポート) → 米国にとって非常に「おいしい」基地。
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冷戦期:在独米軍は 26万人
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現在:3万5千人
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トランプ政権期にはさらに5000人削減を示唆。
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それを横目に、日本は依然として 6万人規模を維持。
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76か所の米軍基地
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その7割が沖縄に集中
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もし仮に「日本を軍国主義に戻したい」勢力がいたとしたら → 最初にやるべきは米軍基地の撤退
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つまり、 “軍国主義を抑えているのは米軍”という皮肉な構造 が存在する。
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アセアンの主要的な国は急速に中国寄りへ傾斜している。
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日本とフィリピンだけが米国寄りである。
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日本は中国から「新型軍国主義」と批判されるが、 実際には 在日米軍こそが日本の軍事的暴走を抑える“ビンの蓋” になっている。
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もし軍国主義を復活させたいなら、むしろ米軍撤退が必要という 逆説的なパラドックス が浮かび上がる。
イラン戦争の歴史的意味
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アメリカは当初「イランの無条件降伏」「体制転換」を掲げた。
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しかし 長期化を恐れ、11月の中間選挙を前に妥協せざるを得なかった。
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イスラエルを怒鳴りつけて停戦に持ち込むほど、アメリカは余裕を失っている。
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結果として、アメリカは“世界秩序をリードする力”を静かに失いつつある。
寺島氏はこれを
「20世紀の世界秩序をリードしたアメリカが静かに幕を下ろしつつある」
と表現している。
今回の戦争は、従来の戦争と質が違うと強調しています。
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ベトナム戦争:5万8千人戦死
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イラク・アフガン:6,800人戦死 → アメリカは地上戦のコストを理解し、絶対に地上戦に入らない。
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ドローン、無人機、AIを駆使
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「イランにこんな技術が?」という驚きを世界に与えた
つまり、 “AI・無人機・遠隔攻撃”が主役の新しい戦争形態が歴史的に定着した という意味を持つ。
寺島氏はこれを
「戦争の質が変わった」 と繰り返し述べています。
ホルムズ海峡をめぐる心理戦が象徴的。
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実際に機雷を撒かなくても →「封鎖の可能性」だけで保険料が跳ね上がる
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船会社は動けなくなる
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世界市場がパニックを起こす
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その市場の反応が アメリカの政治を動かす
つまり、 戦争の主戦場が“市場(マーケット)”に移った という歴史的転換。
寺島氏はこれを
4. イランは“孤立していなかった”という歴史的事実「敵はマーケットだ」 と表現しています。
アメリカとイスラエルは「イランは簡単に崩れる」と誤算した。
しかし実際には:
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宗教指導部が結束
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世界の多くの国がイランを“完全には見捨てなかった”
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直接の軍事支援ではなくても、イランを支える国際的な連結性が存在した
寺島氏はこれを
5. 湾岸アラブ諸国の分裂(サウジ vs UAE)「イランは意外に孤立していない」 と述べ、 アメリカの世界観が時代遅れになっている ことを示す歴史的事実だと捉えています。
今回の戦争は、湾岸諸国の内部対立を露呈させた。
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UAE:イスラエルとアブラハム合意
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サウジ:今回の戦争に激怒、アメリカにも不信感
これは 中東秩序の再編が始まった歴史的瞬間 であると寺島氏は見ている。
6. イスラエルとアメリカの“静かな亀裂”
寺島氏は、、トランプがネタニヤフに「あなたは狂っている」 と言ったという報道を紹介し、 米イスラエル関係の歴史的な亀裂 が進行していると指摘。
これは中東政治の長期的構造を揺るがす。
7. まとめ
日本が国際社会ですべきこと
国連は企業ではありませんから、分担金が多いほど発言力が強まるという単純な話ではありません。ただし、国際社会で主張すべき論理を持つことは極めて重要です。
もし日本が「アジアを代表している」と言うのであれば、アジアの利害をどう束ね、力による現状変更の動きに対してどんなメッセージを発するのか。イラン戦争に対して日本は何を語り、アジアの安定のためにどんな努力をしているのか。そこが問われています。景気づけの言葉だけでは済まされない局面に来ているのです。
さらに、一人当たりGDPを見れば、日本が「アジアを代表する豊かな国」という前提そのものが揺らいでいます。2025年にはシンガポールが9万9千ドル、日本は3万6千ドル。香港にも大きく引き離され、台湾や韓国にも抜かれ、アジアで6位。世界ランキングでは38位です。G7という枠組みに幻想を抱く前に、日本の現在地を客観的に認識する必要があります。
だからこそ、日本は「アメリカに同調するだけの国」というアジアからの目線に対して、そうではないと示さなければなりません。主体的に国際社会へ貢献する意思と構想を持つことが求められています。
たとえば比較平和主義です。理念として掲げるだけではなく、核の先制不使用をアメリカに求めるなど、具体的な戦略として提示すること。多国間協調主義についても同様で、日本がどんな構想を持ち、どんな役割を果たすのかを明確に示す必要があります。
G7でイギリスやイタリアとの関係を強める努力は見られますが、より重要なのは、国際社会に向けて「21世紀の世界秩序に対し、日本はどんな構想を持っているのか」を提示することです。私たち自身がその問題意識を高めていくことが求められているのだと思います。
[ 補足 ]
比較平和主義について
比較対象は、
✔ 日本の平和主義(理念的・抽象的)と
✔ 国際政治の現実(核・戦争・力の論理)